第1110話 兵僕
お久しぶりです。
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右前方からアスカトルの糸、左後方下部からペレのマグマ、上からはゼインの炎、下にはデトの毒が……
ヤバい、流石にこれは対応しきれない。頭で考えている以上、追いきれない。
俺は今、全従魔を相手に一人で、いや二人で戦っていた。
というのも、最初一対十で行おうとしたのだが、それでは物理的に戦闘に参加できない奴らが出てきてしまったので、急遽俺が分身を出して戦っているのだ。
ただ、これがまあ大変だ。
一対五を同時に行うことで擬似一対十を行なっているのだが、全知全眼を使ったとしても処理が追いつかない。というか、従魔サイドが明らかに俺に対して負荷をかける戦い方をしているように感じられる。
殲爆魔法なりなんなりを使えば一発で勝てるっちゃ勝てるのだが、それをしては従魔強化の意味合いがなくなってしまう、というかただの俺の力自慢になるから、俺は反撃をせず、ついでに一撃も食らわないというノーダメ縛りを自分に課している。
そうすることで俺自身の鍛錬にもなるからな。スキルばかりに頼っていてはいずれ痛い目を見るというのは分かっているからな。ん、全知全眼を使ってるって? それはノーカンだろ。ヒトに息を吸うなって言ってるようなもんだぞ?
それでも最初の方は当然全てに対応できていたのだが、従魔側も連携が噛み合い始めてきたあたりから怪しくなり、今となっては避けるのだけでも精一杯だ。ノーダメ縛りを課した自分を爆散させたい。
全知全眼で全てが分かったとしても、それを踏まえてノーダメの選択肢を選ぶのは自分自身だ。しかもそれを常に同時進行で二回行わなければならない。
並列思考があればなーなんて思うが、統合してしまったので当然持ち合わせていない。こう言ったところに選別のデメリットがあるんだろうな。足元が疎かになるというか、細かなところに対応できなくなるというか……
「あっ、」
ピチャ
完全に思考が脇道に逸れてしまった結果、俺は堕天使ズ改め堕蛸天女の脚に足首を掴まれてしまった。そして、コテン、と最も容易く転倒させられてしまった。
その瞬間、集中力が切れたのか分身も消えてしまった。
「お前ら……強くなったな」
俺は少しでも格好がつくようにと思ってそう言ったのだが、自分が負けたのを、従魔の成長にすり替えているような気がして、言った直後に少し後悔してしまった。ただまあ従魔たちが嬉しそうだからいいとするか。
ただ、少し気になったことがある。
「ハーゲン、お前今何をしていた?」
今回の戦いにおいて、筆頭従魔にして俺の相棒であるハーゲンの様子が少しおかしかった気がした。なんというか、周りに譲っている、というか全体的に影が薄いというか……全体でも俺が認識したのは数回程度しかなかったはずだ。
もちろん、俺のスキルを使った上で、だ。だからこそ、きっと何かをしていたはずだ。何もしていない、というわけでないのならばな。
その場にいた俺を含む全員の目線がハーゲンに集まった。一人だけ進化していないハーゲンの姿は、どこか魔境に迷い込んだ雛鳥のような印象を受けた。
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エタりはしません。かならず完結させます。恐らく来年度中には完結すると思います。
ですので、残りの短いようで長い期間応援してくだされば幸いです。
これからもよろしくお願いします。
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