第1109話 眼鏡がね、、


「うわーこれは酷いな」


「えぇ、これはちょっと酷いですね」


 俺たちはただ今、ゾンビの様に群がってきては妖たちに散らされるプレイヤーたちを城の上から高みの見物していた。


 そのあまりにも凄惨な光景に、俺とメガネくんは同情の声を上げずにはいられなかった。因みにだが、俺たちは俺の作ったスキルである、妖光眼鏡を使って妖力が移動する様も同時に観察していた。……メガネに眼鏡をかけさせるな、という意見に対しては私も真摯に受け止めようと思う。


 ただ、このメガネによると、どうやらかなりの妖力が妖たちに集まってきているようだった。何しろ、プレイヤーたちが文字通りゾンビアタックを行ってくれているおかげで、僅かながらとは言え、莫大な妖力が刈り取られているのだ。


 そしてその間にも得た妖力によって妖たちがどんどんと強化され、さらに収穫の効率が上がってしまっているのだ。その結果、冒頭の悲惨な状態を迎えたのだ。


「それにしてもちょっと妖怪たち強くなりすぎじゃないか?」


「は、はい……酒呑童子なんて一本しか持っていなかった筈の刀が何故か四本にまで増えていますしね。他の妖たちもそれぞれ進化しちゃってますね」


 そう、妖たちが見違える程に強くなってしまっているのだ。前回の従魔たちも参戦した戦いでは、その妖力のほとんどが従魔たちに持っていかれてたのに、対し、今回は取り放題食べ放題だからな。雨後の筍のようにグングン強くなっている。


 ん、ちょっと違うか?


 兎に角、俺は今非常に危機感を覚えてしまっている。


 それは、このままでは従魔たちの威信に関わるのではないか、と。


 いやまあ、そりゃ軍の中では強い奴が強いという絶対的なルールは変わらないが、従魔たちは前からいたメンバーだ。どうしても肩入れしたくなってしまう。


 だからと言って妖たちを妨害してやろうという気持ちはないが、妖たちが強くなったのならば、今度は従魔たちの番だ、と思ってもバチは当たらないだろう。


 というわけでこの度の侵攻はメガネくんと妖たちに任せて、俺は従魔の強化に行いたいと思う。


 っと、その前に寄るべき所があるから一度そこに寄ってから向かうとしよう。


 ❇︎


「全員集合ーーーー!!」


 なんだかんだこれを言うのも久しぶりな気がするな。それに、以前とは皆の顔つきも顔ぶれも異なっている。こうして見ると従魔だけでも増えたもんだよな。


「よし、じゃあ全員で俺を倒せ。俺を殺すことができた奴には褒美をやろう」


 やっぱり強さを把握するには自分で戦って見るのが一番だよな。その上で、全員の長所と短所を見つけ出して、より洗練していく。


 にしても全員と一度に戦うっていうのは何気に初めてなんじゃないか? ちょっと楽しみだな。


「全員全力を出せよ? 全力を出さずに倒された奴はお仕置きだからな?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る