第1108話 悩みの草


「うーん、」


 俺は今、絶賛悩んでいた。それは、誰をどうやって強化しようか、ということだ。


 今まで強化するべき対象は従魔だけで、偶にメガネくんがそこに含まれるかどうか、という具合だったので、全員強化しようと思えばできるのだった。方法はもちろん強制進化で、だ。


 だが、今回は妖が大量に加わったことでかなりの規模感になり、全員にそれぞれ最適な進化先を考えて、そこから素材集めをするというのは中々に大変そうだ。


 別に大変なことが嫌だとか、面倒臭い、と言った理由を抜きにしても、いつ攻めて来られるかわからない現状で城を長期間空けておくというのは本末転倒な気がする。だって、防衛力を上げる為の強化なのだから。


 というわけで俺は今悩んでいるのだ。んーどうしよ、そもそも便宜上、妖たちはメガネくんの部隊ってことになってるし、俺が急にアレコレしだすのはどうなんだ……?


「あ、そうだ」


 そうじゃん、妖たちはメガネくんの部隊なんだからメガネくんにやらせればいいのか! そして、メガネくんは俺の部下だから俺がメガネくんを、彼が部下を育てられるように強化すればいいじゃないか。


 そうすれば俺が城を離れる必要もなくなるし、妖たちもちゃんと正規のルートで強化することができる。やはり持つべきは優秀な部下なんだな!


 ただ、だからと言って俺が何もしなくて良いというわけでもない。メガネくんにはしっかりと部下を強化育成できる人材になってもらわなければならない。


 一つ考えたのは俺の強制進化をそのままなんらかの方法で横流しするということだが、それでは俺がまた使いたくなった時に困るし、そもそも妖たちにとって強制進化が上手く作用するかは分からない。


 当然、それなりの結果は出るんだろうが、彼らはモンスターたちとはまた別軸で存在しており、強さの基準も違う。それなのに、こちらと同じようなやり方で上手くいくとは思えないのだ。


 よし、ここは思い切って相談してみるか。


 ❇︎


「妖たちの強化ですかー、手っ取り早いのは妖力を分け与えることだと思いますが、こちらが本拠点である以上、絶対にすぐ限界が来てしまいますからね。かと言って、先ほど陛下がおっしゃった強制進化も上手くいくかは微妙なところですよね。うーん」


 と、流石のメガネくんも頭を悩ませているようだった。


 妖力かー、確かに妖たちは妖力をもってしてつよくなるもんなー。


「ん、そういえば俺たちが向こうから出てきた時に、こっちの世界の住民にも妖力がほんのちょっとだけだけど付与されたって話だったよな?」


「は、はい。しかし、それもかなり微弱で雀の涙程度しか……はっ!」


「そうだ。どれだけ微弱でも塵も積もればって奴だろう?」


「そうですね! ではさっそく人里に襲撃に向かいますか?」


「いや、その必要はない。こちらから襲撃すると、NPCまで倒してしまう可能性があるからな。それよりかは無限リスポーンしてくれる奴らを狙った方が効率的だ。それに、こちらから動かずとも……」


 カンカンカンカン!


 お、さっそく俺設置した見張りが機能しているみたいだな。


「妖力と経験値は向こうが提供してくれる。ありがたくいただこうじゃないか」


「はいっ!」


 それにしても、もう来たのか。思ったよりもインターバルが短かったな。

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