第1102話 恐怖な屈折


 堕天使とメガネくんの試合が終わると、俺は何がどうなっていたのか、メガネくんに聞かざるを得なかった。


「め、メガネくんってこんなに強かったんだな」


「そんな! 陛下のお力に比べれば自分なんてまだまだです! これから先ももっともっと強くなって陛下のお役に立てられるよう、頑張ります!」


 メガネくんは驕り高ぶることなく、曇りなき眼でそういった。ってか、キラキラしすぎだろってくらい目ん玉が輝いてた。


「ちょっと聞いてもいいか? まず最初に姿を消してたよな? アレっていつから使えるようになったんだ?」


「はい。アレは正に陛下が私を初めて強化してくださったその日にあの能力が使えるようになりました! カメレオンのモンスターを素材として使ってくださったので、擬態ならぬ「溶態」を使わさせて頂きました!」


 へ、へーカメレオンの力ってことか。うん、マジで覚えていないんだが??


 俺がメガネくんを強制進化したであろうことはわかるんだが、その時に俺はどうやらメガネくんに対して強力なモンスターの素材を使ったらしい。でも、確かに擬態とかできたら情報収集とかに役立つかもなーなんてことを考えていた気もする。


 それにしても擬態じゃなくて溶態、か。周囲に溶け込むように擬態するという意味なのだろうな。


「あ、じゃああれはどうなんだ? 途中で堕天使が蛸足を回転して攻撃した時があっただろう? 別に溶態は姿が見えなくなるわけで、本当に存在までもが消えるわけじゃないんだろう?」


「はい。アレはですね、陛下が二度目の強化をしてくださった時に、使えるようになった羽根で空中に浮いていただけなんです」


「は、羽根?」


 あ、そういえばメガネくんに天魔の素材を使って強制進化したような気もする。これはなんとなくだが覚えているぞ? それによって空まで飛べるようになったわけか。姿を消して宙にまで浮かれたらそりゃ勝てないわな。堕天使たちにはちょっと荷が重かったか?


 ……って、メガネくんの強さ今のところ全部俺の所為じゃねーかよ! 


 しかもタチの悪いことにそのことを俺が全部忘れてしまっているのも問題だよな。なんか勝手に得した気分になって、損した気分だ。


「ん、ちょっと待てよ。最後の攻撃を撃つ瞬間に姿を見られて攻撃されたけど効いていなかったのって、アレはなんだ? アレも俺が強制進化させた時に使えるようになったのか? ってか、どういう仕組みだったんだ?」


 思わず質問攻めにしてしまった。だけど、そのくらい最後の現象はとても気になるものであった。


「あ、アレですか。デコイに関しては妖術の一種ですね。自分の幻影を作り出すというものです。自分でもちょっと卑怯だと思うのですが、全方位を警戒されて死角が無くなったから無理やり作らないと、と思いまして、それで単純にデコイを作ったんです。そうすればとても警戒している堕天使さんたちは無条件に攻撃してくれると思いまして……って、そのくらいは陛下も分かりますよね、すみません喋りすぎました!」


「だ、大丈夫だ」


 そうか、最後の奴に関しては妖術だったのか。自分の手札をしっかりと把握し、相手に勝つために必要な手札を必要なだけ使う。この考え方は俺も見習わなければならないな。やっぱりメガネくんは賢いな。


「それで、妖術に関しては誰から教わったんだ?」


「はい。天狐様にご教授いただいております! それと同時に大天狗様には神通力の修行もつけてもらっているのですが、そちらの方は中々厳しいですね……妖術の方もまだ簡単なものしかできないのでまだまだ先は長そうです!」


 えぇ……ちょっとやりすぎだろ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る