第1101話 食えないレンズ


 姿を消したメガネくんの攻撃は想定を遥かに超えるものであった。


 天女になっている堕天使たちの背後に現れたと思ったらそこから魔法をぶち込み、すぐに消失、そしてまた死角から魔法を撃ち込むという中々に強力でいやらしい攻撃を行っていた。


 妖の隔世の時から気づいていたことではあったが、メガネくんは俺と同じ無彩魔法を持っており、その威力は普通に高い。それだけで普通に固定砲台として十分に機能するのだろうが、それに加えて消えるとなればその恐ろしさはグンと跳ね上がる。


 テレポート固定砲台でないことが唯一の救いではあるが、それでもどこから撃たれるか分からない魔法というのはとても怖いだろう。


 だが、堕天使たちもタダではやられるつもりはないようだった。


 まず、第一の対応として取ったのは、蛸足による広範囲攻撃だ。自身を中心に蛸足を放射状に伸ばし、そのまま回転することによってその範囲にメガネくんがいるかどうかを確認した。


 ただ、メガネくんにもその様子はバッチリと見えており、どうやって躱したのかは分からないが、その蛸足攻撃にメガネくんがヒットすることはなかった。そして、蛸足攻撃が止んだ瞬間を狙って姿を現し、攻撃した。


 堕天使たちはまるで朧とでも戦っている気分なのだろうなー、と側から見ていてそう感じた。


 神出鬼没でこちらの攻撃は全て避けられ、敵の攻撃は全て食らってしまう、かなり不味い状況だろう。ただ、堕天使たちにも勝機がないわけではない。


 気づけばいつからか俺は堕天使の応援をしていた。どうしても負けている方を応援したくなるものだ。あと、思ったよりもメガネくんが殺意多めでびっくりしている。


 おっと、ここで堕天使たちがどうやらメガネくんの弱点に気がついたようだ。


 天女の姿をしていた堕天使たちが、その姿は変えないまま、新たに二つの顔を生み出した。そうすることによって、全方位三百六十度全てを警戒することができるようになった。


 メガネくんの消失固定砲台の弱点はそう、魔法を放つ前にその姿が現れてしまうということにある。


 つまり、死角を消して全方向警戒していればその攻撃を食らうことはなくなるのだ。堕天使たちもしっかりと考え対応する力を身につけているようだ。


 そして再びメガネくんが姿を現した。もちろん、その姿は堕天使たちにしっかりと見られており、


 ズドドドドドン!


 っと、蛸足による攻撃をお見舞いした。これは流石に勝負あったか? そう思った時だった。


 なんと、蛸足の先にメガネくんがいなかったのだ。そして、どこからともなく現れたメガネくんは堕天使の首元に魔法を携え、寸止めをしていた。


「やめっ!」


 まさか、ここまでメガネくんが強いとは……でも、確かに元々メガネくんの頭脳はピカイチだったのだ。そこにちゃんとした武力が加われば戦いの駆け引きで負けるはずはなかった。


 読み合いになった時点で堕天使たちに勝ち目はなかったのかもしれない。


 それにしても、色々と気になる点があるな。そもそも何で姿を消せるようになったのかとか、蛸足の攻撃はどうしたのか、やどこから現れたのか、とか。


 もしかしたらただ消えるだけじゃなくて本当にテレポートできていたのか? もしそうなのだとしたらどこでそんな技を身につけたのか、色々聞くことはありそうだ。


 ということで、ここにきて初の勝利者インタビューを行いますか!







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