第1094話 椰子の龍


 八本の首を撚り合わせ、一つの大きな首にした海馬。ハッキリ言うとちょっと気持ち悪さもあるのだが、その効果は思ったよりもあるようだった。


 まず、一本一本が独立していないことによって、意識していない所を狙われることがなくなった。流石に九本も首があったら意識が分散してしまう。全方向警戒するのはもはや警戒していないのと同義だからな。


 一本にしてしまったら弱点が集中するから弱くねーか? と思ったが、逆に意識をそこに全集中できるから良いのだろう。


 そしてもう一つの利点としては単純に物理耐久力が上昇していると言うことだ。麻縄と綱引きのロープどっちが頑丈かって言われればそれは比べるまでもないだろう?


 それに、海馬の場合もかなり強めに捻ってあるらしく、相当な業物ならまだしも、骨で出来た剣で切断するには相当骨が折れそうだ。……ホネだけに。


 ゴホン。


 さて、第二形態と化した海馬に対する餓者髑髏だが、海馬の形態変化が効いているのか少し戸惑い、対応を決めあぐねているように見えた。


 しかし、餓者髑髏もただやられるだけではなかった。


 と言うか、形態変化においては餓者髑髏の方がより向いていると言ってもいいだろう。なんせ骨の集合体だからな。再構築もお手のものだと言わんばかりに、カラカラと音を立てて、骨の剣が新たにチェンソーに生まれ変わった。


「え、えぇ……」


 自分で再構築できるってことは、すなわち自律駆動ができるってわけで、それを応用してチェンソーを作るって……本当に妖怪さんですか?


 ギャリギャリギャリという音を立てながら海馬に近づき攻撃を試みた。海馬は相手のまさかの行動にあんぐりしており、上手く反撃ができない様子だった。


 確かに、このねじり鉢巻スタイルは防御面に関しはいいのかもしれないが、攻撃に関しては今までと変わらない。というか、砲台が一つに集中している分、相手からすると避けやすくなっているとも言えるだろう。


 そのまま接近された餓者髑髏に対して何もすることができないまま、骨チェンソーに一刀両断にされてしまった。正確には、される前にストップしてすぐ様回復させてやったけどな。流石に従魔の首が刎ねられる、しかもチェンソーで、はなかなかにショッキングだ。


 ふぅ、色んな意味でヘビーな試合が終わった。ちょっとお腹いっぱいだな。ここいらで休憩がてらデトックスでも出すか、そう思い、デトと野槌というミミズの先に口だけ生えた妖怪を戦わせてみたのだが……


「え?」


 なんと、デトの毒が野槌に効くことなくあっさりと負けてしまったのだ。


 もしかして妖怪に毒って効かないのか? でも確かに毒ってケミカルなイメージでそれは人間や動物などの生物にしか効かないイメージはある。でも、このゲームの世界でそんなことあるのか?


 いや、でも野槌が特別に効かなかったという可能性も……いや、野槌は妖怪の中でもより生き物っぽいしなー。


 これは不味い。我らが従魔が二連敗している。これは威信にも関わる。ここで一発締まるような戦いを見せてもらわないとだな。

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