第1093話 スイミー


 ゾム対鎌鼬の結果は予想通りの結果となってしまった。もしかしたらもしかするかもと思わないこともなくも無かったのだが、流石に厳しかったようだ。


 鎌鼬の名誉の為、そしてなによりSAN値の為、試合の詳細は伏せさせてもらおう。


 さて、次の試合だが、誰にしよう。ゾムと共に従魔の可愛い担当であるアイスを出してもいいのだが、多分だけど似たような感想になってしまうだろうから、次はそうだな、海馬で行こう。


 なら相手は……餓者髑髏だな。


 でかい奴同士の怪獣対戦が見てみたくなったのだ。きっとど迫力な試合を展開してくれるだろう。


 両者が向かい合うとそれだけでも絵になる構図だった。海馬というどちらかといえば西洋寄りのモンスターに対して、餓者髑髏というゴリゴリの和の妖怪という異質感も含めていい感じだ。


 そもそも餓者髑髏は、戦死者や野垂れ死にした者なんかの埋葬されなかった死者たちの骸骨や怨念が集まってできた巨大な骸骨である、とメガネくんに聞いた。


 その点からするととてもアシュラと似てるし、骸骨で言うなればスカルボーンも同じ生まれだ。この試合の次第では俺たちの骨ズに新たな戦力が加わるかもしれないな。


「はじめっ!」


 今回、先に動いたのは海馬だった。


 周りのことなど一切気にしていない初手ブレス、しかも火、水、木という三属性だ。なかなかに容赦がない。もしかして従魔の中でも九番目と割と後輩で、常日頃鬱憤が溜まっているのかもしれない。その図体から城の防衛に回ってもらっていることも多かったからなー。


 これからは積極的に戦場に駆り出してもいいかもしれない。


 そのブレスは餓者髑髏の、こちらもまた巨大な図体にクリーンヒットした。普通にちゃんとしたブレス、しかも三属性、を食らった餓者髑髏は粉々に砕け散ってしまった。


 海馬は非常に満足そうに不敵な笑みを浮かべた。だが、それは海馬の勝利を意味してはいなかった。


 カラカラカラ、という音を立てて粉々になった骨たちが動き出し、再び一つになったのだ。どうやら餓者髑髏は不死身らしい。でもまあ、確かに埋葬されなかった死者たちの骸骨や怨念の集合体ならば、その形が崩されたところで再集合すれば何の問題もないか。


 これまた思ったよりも強敵かもしれないな。


 再びカラカラと音を立てながら今度は腕を剣のような形に再構築した。そして、できた巨大な剣をブゥンと振り下ろし、海馬の首を一つ切り落としてしまった。当然海馬には再生能力はない。


 これはちょっと厳しいか? と、俺が思っている間にも、餓者髑髏は見た目にはそぐわぬ俊敏さで追撃を繰り出しており、二本目の首が刎ねられそうになった時だった。


 海馬も学習しており、骨でできた剣の腹を狙われていない首の頭で頭突きし、剣を跳ね返した。そして、その次の一手が驚きだった。


 なんと、残っている八本の首をまるで縄でも編むかのように撚り合わせ、一本の大きな首にしてしまったのだ。その姿はまるで大きなヤシの木、いやタコさんウィンナーを逆さにしたみたいになってるぞ?

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