第1092話 鎌鼬に構いたい
俺の名前は鎌鼬、風を操る妖怪だ。
俺は今、魔王城というところへ来ている。俺を従えた奴のご主人様の屋敷らしい。こんなにでかい屋敷を見たことなかったから多少は驚いたが、そんなことはどうでもいいのだ。俺が気に食わないのはただ一つ、この城に魔獣がいるってことだ。
その魔獣達は俺の主の主の配下らしい。なんか舐められてる気がするよなぁ? というか、俺たち妖が舐められる訳にはいかねぇ。
そして、始まった魔王軍最強決定戦。まあ、魔獣と妖どっちが強いか決めよーやってことだな。初戦は酒呑童子様とホネデカ野郎が戦って、酒呑童子様が勝った。流石だな。
でも驚いたのだが次に戦った大天狗様がやられたってことだ。でも、相手はかなり卑怯な技を使っていたからまあ仕方ない。正々堂々戦えば大天狗様が負ける訳ないからな。
そしてその大天狗様がやられた穴を埋めるように天狐様が魔獣に圧勝した。やっぱり三妖はつえーな! 俺もいつかあのくらいの強さを手に入れたいぜ!
そして主の主、魔王が小さい人間? のような魔獣を連れて出てきてこう言った。
「そうだ、このゾムに俺なら勝てるっていう妖出てきてくれないか?」
俺はこの瞬間ビビッときてしまった。酒呑童子、大天狗、天狐(敬称略)と続いてこの俺が現れて魔獣をボコボコにしたら実質ナンバーフォーみたいじゃね、と。
そして魔王が連れてきた魔獣はどっからどー見ても強くは見えなかった。攻撃力、機動力、そして絶対に勝ってやるという意志、勝利に必要などの要素でも負けていない。つまり絶対に勝てるということだ。
俺はこれからのことを考える前に、立ち上がっていた。
「俺が行きます!」
そうして迎えた第四回戦、こうして対峙してみてもこの気色の悪いチビに負ける道理が見当たらなかった。どこを見ているのかも分からねぇ、そんなどろんとした虚な目も気にくわねー。さっさと終わらせよう。
「じゃあ、はじめっ!」
「先手必勝、旋風塵!」
俺は、砂埃を巻き上げ竜巻を起こし、敵に直撃させた。吸引力とその中で舞う砂塵は刃物のように痛いはずだ。並大抵の奴じゃこの攻撃を受けて立っていることはでき
「なっ!?」
そこには試合開始直後となんら変わらない姿でそこに立っていた。いや、少し濁っていた体がもっと澱んだような気はするが、ぱっと見ダメージを受けていないように思う。なんせあの虚な目が一切変わっていない。くそふざけやがって、だが流石に一筋縄ではいかないってことか。ならば、
「真空刃!!」
俺は真空の刃を生み出し、それを確実に敵の首元に届けた。そして確かに切った手応えはあったのだが。
「なにっ!!??」
その首が刎ね飛ばされるどころか、何事もなかったように再びくっついてしまった。い、一体コイツは何者なんだ? こ、これは全力を出すしかなさそうだな。まさかここまで出させるとはな。
「
旋風塵で捉えた敵を真空刃で粉々にする、俺の最終奥義。俺の技が終わった時、そこに敵はいなかった。どうやら正真正銘粉々にできたようだ。
そう思った瞬間、背後からピトっと冷たい何かが触れた。慌てて振り返るとそこには……
ここで俺の記憶は途切れた。
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