第1091話 妖対従魔
どこからともなく降りてきた蜘蛛の糸、それは地獄から抜け出すための糸口ではなく、どうやら地獄へと招待するシルクロードだったようだ。
大天狗はそれに気付かぬまま、というより気づく間も無く糸に絡め取られ、その首元にアスカトルが刃を忍ばせていた。これは勝負あったな。
大天狗が非常に悔しそうな顔をしている。これを機に正面突破でねじ伏せるだけでなく、頭を使った戦法なども見つけていって欲しいものだ。
逆にアスカトルの作戦は優秀だった。小蜘蛛の中に姿を晦ますことで相手を撹乱させ、ならば全て消してしまえという大天狗の発想を織り込み済み、というかそうなるように誘導した戦術はピカイチだった。これならもしプレイヤー達が攻めてきてもある程度は任せられるだろう。
よし、じゃあ次だなー。
実を言うと、さっきの戦いはアスカトルが勝つんじゃないかと思って組んだのだ。大天狗に戦術の重要性を知って欲しかった、って言うのもあるからな。で、その観点からすると……
「次の試合はペレ対天狐だ。準備してくれ」
この二人はどんな戦いを見せてくれるんだろうな。また三妖だが、いい戦いをするのではないだろうか。
と思った俺の予想は思わぬ形で外れることとなった。
「はじめっ!」
なんと、試合開始直後から天狐がペレを終始圧倒しそのまま勝利を収めてしまったのだ。
細やかで大胆な妖術を使い、ペレに何もさせず一方的にダメージを与え戦闘不能にしたのだ。恐らくペレ自身は自分が何をされたのかも分かっていないレベルでの差があっただろう。
確かにペレは広範囲攻撃が得意で、だからこそ天狐と戦うことで繊細で緻密な攻撃というものを学べればなーなんてことを大雑把に考えていたものの、まさかここまで一方的になるとは思っていなかった。
具体的に俺が分かった範囲で説明すると、天狐は始まりと同時にペレに対して足を拘束し、動きを封じそしてペレの周りを真空で包んだ。ペレは人間じゃないから酸素がなくても死なないが、炎は燃えない。つまり、ペレの武器を奪ってしまったのだ。
それを一瞬の内にされただけでもパニックものだが、さらにダメ押しで催眠術的なものを掛けられたペレは戦闘不能になってしまったのだ。
大天狗をアスカトルが倒したからみくびっていたが、ちゃんと強いんだな。まあ、大天狗もそこら辺のプレイヤーの前に出したら無双するだろうし、やっぱ三妖って強いんだな。
でも、このままでは妖部隊に大きい顔をされてしまう。別に従魔と妖で隔たりもないが——というかそんなことが起きるほど時間も経っていない——それでも俺としてはちゃんと従魔達の強さも知ってほしい、ということで、
「じゃあ次はゾム! っと、相手は誰にしようかなー、そうだ、このゾムに俺なら勝てるっていう妖出てきてくれないか?」
俺がそう問いかけると真っ先に一人の手が上がった。
「俺が行きます!」
それは鎌鼬だった。どうやらゾムの次なる犠牲者は彼のようだ。
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