第1090話 蜘蛛の糸
激しい攻防の末、そこに立っていたのは酒呑童子だった。
みんなには見えていなかったかもしれないが、二人の戦いはとても目を見張るものだった。アシュラの六つの拳に対し、酒呑童子は一本の刀で戦っていたように見えたが、時々明らかに同時に二つの拳が弾かれたり、間に合っていないのに拳が防がれたりしていた。
まだ、確信は持てていないのだが恐らく酒呑童子は見えない刀を扱っていたのだろう。それが宙に浮いているのか自分で持っているのか、はたまた常時発動型なのかポイントで出現させているのかは分からないが、かなり厄介で強いということは間違い無いだろう。
俺が以前使っていた武装演舞みたいな感じだろうか、後でメガネくんを通して聞いてもらおう。
ただ、アシュラもアシュラで武器を使っていなかった。俺が以前与えた陸刃の剣を使えばもっといい勝負、いや普通に勝つこともできたんじゃ無いだろうか。
温存していたのか、はたまた気に入らなくなったのか、何にせよ本人が後悔したり言い訳したりしていなければいいんだけどな。
よし、じゃあ次だな。次は誰にしよう。妖と従魔の誰かを戦わせたいからなー。そうだ、アイツらにしよう。
「次はアスカトルと大天狗だ。二人とも準備してくれ」
個人的にアスカトルは仕事人のイメージがあって非常に信頼している。それを言ったら従魔みんな頼っているが、なんか頼り甲斐があるんだよな。
あと、大天狗に関してだがさっきメガネくんに大天狗の神通力ってこっちの世界でも使えるのか聞いたところ、問題なく使えるらしい。
なんでも、俺たちが試験をクリアして隔世と現世を繋いだことで、こちらの住民にも僅かながら妖力がもたらされたらしい。その妖力を高めるには向こうに行かないといけないらしいが、大天狗からすればそれで十分らしい。
...あれ、これ前も言ったか? ん-、まあ神通力が使えればなんでもいいか。
そんなアスカトル対大天狗の戦い、一体どうなるんだろうな。三妖に対してアスカトルで大丈夫なのか、という見方もあるが、ウチの従魔たちはちゃんと強いからなー楽しみだ。
それに実の所、大天狗はアスカトルに対して弱いと思っている。
「準備はいいか? じゃあ第二回戦始め!」
準備ができ、向かい合った両者に向かって試合開始の合図を告げると、アスカトルの姿が消えた。
正確には、始まりと同時にアスカトルの体が小さな蜘蛛に覆われ、そして居なくなったのだ。側から見ていた俺からすると恐らくアスカトル自身も小蜘蛛になってその蜘蛛たちに紛れたのだろうと予測はつくが、突如目の前にそんな奇妙なことが起きた大天狗は普通にテンパってしまうだろう。
得意の神通力を発動しようにも、対象が小さすぎて多すぎてどうにもならないようだ。これは思ったよりも呆気なく、そう思った時だった。
「はぁあああああ!」
大天狗が自身を中心にエネルギーを放出した。妖力を放ったのだろうか。なるほど、神通力は他者の妖力を操ることで攻撃する技だから、自分の妖力を扱うことなんてお手のもと言うわけだ。
その自爆とも思える攻撃によりアスカトルが生み出した蜘蛛の子たちが一瞬にして消え去ってしまった。流石は三妖と思ったのも束の間、
勝ったと油断している大天狗の元に蜘蛛の糸が垂れてきた。これに気がつけるかどうかで地獄から抜け出せるかどうかが決まるのだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます