第1088話 最強の決め方


 魔王軍、これは非常にアバウトなもので、このゲームでその全容を知るものは誰一人としていないのではないのだろうか。


 強いて言えば運営くらいなものだろうか? いや、それすらも怪しいはずだ。


 魔王軍は魔王軍に味方するものであれば誰でも所属できるから、それらを正確に把握するのはいかに運営であっても厳しいのだ。


 なんせ、行動には一切出さず普通にプレイしていても、心の中で俺は魔王軍だと思っていればそのプレイヤーは間違いなく、魔王軍なのだ。


 ま、アレコレいったがその戦力をアテにするかどうかはまた別問題だ。どれだけ内に秘めたるものが大きかろうと、行動に起こしてくれなきゃ他人からは知りようがないからな。


 という訳で、俺が把握している範囲で魔王軍を整理しようと思う。まず魔王軍と言って思い浮かべられるのは従魔たちだろう。


 十名の従魔に加えて堕天使達もそこに含まれる。そういえば堕天使達は天女になってた気がするから、堕天女か?


 その次はメガネ君と、彼が率いる妖たちだな。比較的最近生まれた部隊だが、その強さは先のプレイヤー襲撃によって十分に証明されている。


 そして助っ人的な存在として吸血鬼のカイト、破戒僧の先輩であるクラーゼだな。


 最後はプレイヤーだな。ゴブリンの奴と司祭の奴がいたはずだ。あれ、名前なんだっけ? ってかそもそも聞いたか?


 ……メガネ君のときもそうだが俺はどうやら人の名前を覚えるのが苦手らしい。


 これが主な魔王軍の構成メンバーだな。後、有事の際は入りたいと望むプレイヤーが加勢してくれることだろう。


 んー意外と多いな。最強決定戦に二人を除くプレイヤーを参加させるのは無しとして、妖部隊も参加者を限定した方が良さそうだな。


 ん、ってか比率的に従魔vs妖、ひいては俺対メガネ君、みたいな構図になっちゃうな。


 対戦形式は総当たりは難しいだろうから、俺が適当にトーナメントを組んで、そこから調整していこう。


 もしその仕様上、順位とかに不満があったら直接異議申立てを行って、殴り合って決着を付けてもらおう。そうだな、一度戦った相手とは戦えないっていうルールにすれば大丈夫だろう。


 ま、ルールとかゴチャゴチャ面倒臭いことは抜きにして、強い奴が強いんだ。俺はそれが分かればいいから後はその場のノリでやっていこう。


 参加者を呼び出し全体に軽くルール説明を行った後、俺は第一回戦の組み合わせを発表した。


 どうせ後で追加すればいいのだから、トーナメント自体は俺が好きなように組ませてもらおうということで、


「第一回戦、アシュラ対酒呑童子!」


 武と武のぶつかり合い、って感じだな。アシュラに関しては最古参の内の一人でよく知っているが、酒呑童子に関してはほぼ何も知らないと言ってもいいだろう。


 ただ強いということは間違いない。ならばどちらの方が強いのか気になるというのが、男のさがというものだ。

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