第1087話 恐怖の産声


 声明? そりゃまた大事だな。そういうのって犯罪だったり、テロだったりに使われるものじゃないのか?  まあ、本来の使い方ではないんだろうが。


「それで一体どんな内容なんだ?」


「それが……では、読み上げますね。『我々は打倒魔王を目標に組織されたレイドパーティ、フェニックスだ。あらゆる手段を行使して、魔王城攻略を成功させるまで、何度でも立ち上がり続ける』と序文にはこのように書いてありました」


「序文?」


「はい。その後はレイドへの参加願いや、それに誘導するための魔王の悪評を書き連ねております。正直、デマも多く書かれており、見ていて気持ちの良いものではありませんでしたね」


「そうか……とりあえず報告してくれてありがとう。これから対策を考えなきゃいけないな」


 ここまで本格的なレイドが組まれるとは思っても見なかったな。魔王ってそこまで目の敵にされてるのか?


 いや、ただ単に目の前に大きな壁があるからそれを乗り越えよう、ぶち壊そう、っていうだけかもしれない。この世界はあくまでゲームだからそういった人達も一定数いるだろう。なんなら俺自身もそう言った節はあるかもしれない。


 でもそんな、ゲームを純粋に楽しもうとする姿勢が一番怖いかもな。彼らはきっと諦めることを知らないだろうし、本当にクリアするまで挑戦し続けるだろう。だって、クリアすることが目的なのだから、それ以外の手段で彼らの欲が満たされることは決してない。


 ゾンビアタックという、俺自身がこの世界に対して行ったことを俺自身がされるとは、思ってもみなかった。


 ……いざという時は負けてもいいかもしれないな。


 俺にとって一番大事なことは別に勝ち続けることじゃない。そんなことよりは俺が楽しむことや、配下達が無事でいることの方がよっぽど大切だ。


 あくまで魔王や勝利というのはそれらをより堪能する為の味付けに過ぎない。だからそれに固執しては本末転倒だ。


 魔王が打倒されたら、また新たなジョブを探求してみてもいいかもしれないな。それこそ、仙人の道を極めてもいいだろうし。


 あ、でも俺そういえば破戒僧だったわ。


 ま、何はともあれ当面の間俺は負けるつもりはない。ワザと負けることほどつまらないこともないだろう。


 ってことは今日から特訓だな。


「あ、そうだ」


 特訓の前にしないといけないことがある。それは戦力の確認だ。妖の隔世で大幅に戦力を増強したってのもあるが、それ以前にもプレイヤーをちょこちょこ招いたりしてるから、それ全てを含めて皆がどれくらいの強さなのかを把握しておきたい。


 ってことで、


「魔王軍最強決定戦やっちゃいますか!」


 そうだ、アイツらも呼ぶとするか。

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