第1084話 帰還
「……で、これはどういう状況なんだ?」
俺たちは今、大勢の妖精に囲まれてとてもメルヘンチックな状態へと陥っていた。なんでも、試練をクリアしたご褒美らしい。いや、こんなものよりもレアアイテムかレアスキル、せめて金をくれ。
「おいプーカ、お前まで俺たちに従っていいのか? お前はここで試練を続けなくていいのか?」
「お気遣いありがとうございます。私もそうしたいのは山々ですが、貴方が試練をクリアしてしまったことで、この世界はもう閉ざされた世界では無くなりました。つまり、試練をする必要がないのです」
ふむ、そういうものなのだろうか。
プーカ、結局、妖の隔世というのは人間が妖と距離を置くことによって生まれたものだった。というのは分かったが、俺が試練をクリアしたからといって別に試練をする必要がなくなるわけじゃないと思うのだが。
「もしかして、誰かがお前の試練をクリアした時点でこの世界が開けるようになっているのか?」
「はい。一つでも穴が空いていればそれは開け放たれているのと同じことですから」
また極端な話だな。少しでも窓が開いてたらそこから虫が入ってくるから窓が開いてるのと変わらない、みたいな理論だな。
でも超厳密に言えば窓が閉まっているか開いているかなんて誰も分からないし、そもそもの定義からして異なるのだろう。
つまり、プーカが閉じていないと判断すればこの世界は開けるということだ。え、プーカめっちゃ権力者じゃん。普通にこの世界牛耳ってんじゃんか。
「それにしても驚きましたよ、貴方たちの手法には。まさかただ懐柔するだけじゃなくて、一人が極限まで追い詰めて、もう一人がそれにつけ込んで懐柔するなんて思いもよりませんでした」
あ、バレてたのか。大丈夫か、これレギュレーション違反なのでクリア取り消しますとか言われないよな?
「わ、分かって私たちを試練合格者にしてくださったのですか?」
メガネくんがプーカにそう尋ねた。おいおい、そんなこと聞いて取消されたら洒落にならねーだろ。こういうのはスルーでいんだよ、スルーで。
「えぇ。私の考えが及ばなかったのは事実ですし。それに……貴方の妖たちを大切にしようとする心は本物だと感じましたよ。ほら、その証拠に、貴方の座敷童はとてもよく懐いておりますもの」
「あっ……」
そこにはメガネくんがこの世界にきて初めて従えた座敷童が嬉しそうにちょこんと座っていた。もしかしたらこの座敷童が俺たちに幸運を運んでくれたのかもしれない。
だって、俺懐柔とか服従とか一切気にしてなかったんだもん。正直、今回ばかりはメガネくんに助けられてばっかりだ。ん、今回だけじゃなくて前からだったような……
ま、まあ兎に角メガネくんの強化によって無事、我が軍に妖の力が加わったことだし、久々に我が従魔たちに会いに行くとしますか!
「プーカ、俺たちを元の世界に帰してくれ」
「はい、かしこまりました。試練をクリアされた特典としてあちらの世界でも妖が無制限に使えるようにしておきましたので、是非ご堪能ください」
え、ってことは他の人は制限付きってことなのか? と聞く間も無く俺たちは白い光に包まれた。そして、
もはや懐かしさすら感じる俺たちの城の前に……
「な、なんだこれは!?」
目の前には俺たちの慣れ親しんだ城ではなく、リアルに大炎上している城があった。俺がいない間に一体何があったんだ……!?
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これにて妖編は終了です!!
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