第1083話 最終試練
『ほう、サラマンダーすらも……ここまで来ただけのことはあるようですね。ですが、次はそう上手くはいきませんよ? 第六の試練開始します』
どんどんと自我を持ち始めたアナウンスを横目に、魔法陣からは大きくて黒い犬が現れた。しかも大量に。
一瞬、以前戦ったことのあるケルベロスかと思ったが、アイツは三つの頭があったはずだ。コイツらは皆、一つの体に一つの頭を装着している普通の犬だ。見るからに獰猛で、毛並みも軽く燃えているような感じになっている。
コイツらも妖精に含まれるのか、やはり妖精も妖の内、ということなのだろう。
「陛下、この犬たちは恐らくヘルハウンドと呼ばれる犬でございます。不吉の象徴として昔から恐れられている妖精ですね……」
やっと試練っぽくなってきたな。正直不吉の象徴とか言ってくれた方がやり易い。だって容赦無くできるからな。十体くらいいるけど、群れないと勝てないって言ってるようなもんだぜ?
「メガネくん、俺に合わせてくれせーの、」
「「【無彩魔法】、トーン・ゼロ」」
これはメガネくんに教わった魔法なんだが、非常に便利だ。敵の動きを止めて徐々に徐々にダメージを削っていく攻撃だ。そう、まるで黒の絵の具が全ての色を上書きするように。
「陛下、こちらも?」
「あぁ、もちろんだ。兵は多いに越したことはない。それに、メガネくんが自由に使える駒が沢山あった方がいざって時に役立つだろう?」
「心遣い感謝いたします」
『まさか、ここまでとは……次は最後の試練です。最後は、、
そこでアナウンスが途切れた。そして今回、魔法陣から現れたのは
「最後は、私が相手になりましょう」
「お前が、プーカか」
そう、プーカ自身であった。プーカはその可愛らしい名前から少女のような姿を想像していたが、実際現れたのは、男とも女とも区別がつかないような、でも容姿はとても整った姿をしていた。コイツを倒せばこの世界からようやく脱出できる。少なくとも、その手がかりは得られるはずだ。
「貴方たちは見事、私の意志を汲み取りこれまでの試練を突破してきました」
ん、意志?
「いつの世も妖と人間とを隔てるのは常に人間側なのです。人間が私たち妖に歩み寄りさえすればその壁は取り除かれるのです」
ん、ちょっと待てコイツはさっきから何を言ってるんだ?
「そもそもこの世界に用意された妖を従える二つの方法は、私からの問いかけなのです。暴力か友愛か、貴方たちはこの試練で私の問いかけに対して全て友愛を持って答えてくれました。これは私からの感謝の気持ちです。プーカの試練クリアおめでとう」
「は? ……は!? ちょっと待ってくれどういうことだ? 最終試練は無いってことなのか?」
「はい。私はただ貴方たちがこの国に相応しいかどうか、試しただけです。それに、サプライズは嬉しいものでしょう?」
いや、そんなニッコリ微笑まれても。
ちょっと待てよ。俺はプーカの話を頭の中で整理した。そして、今までの、試練が始まってからの俺らの行動を振り返った。そしてある疑問点が浮かび上がった。
「おい、もしかしてメガネくん。今までの妖全部懐柔してたのか?」
「え、あ、はい……陛下が弱体化してくださったので基本的に服従するまでもなく懐柔させることができましたよ?
「あ、マジかよ……ってことはこの試練のクリア条件って出てきた妖精を全部懐柔するってことだったのか?」
「はい、その通りです!」
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