第1079話 怪と精
気づくと俺は受付の前に立っていた。しかし、目の前に受付の姿は無かった。
「なあ、今の聞いてたか?」
「は、はい……これは大変なことになりましたね」
「あぁ、まさか妖怪だけじゃなくて妖精もいるなんてな」
「はい、私も最初に情報を手に入れた時は妖精も居ると分かっていたのですが、この世界に来てから妖怪ばかりで完全に失念しておりました……」
俺たちは今まで妖怪の戦力ばかりを手に入れてきた。土蜘蛛然り大天狗然り、天狐然りだ。
だが、プーカとやらを見たかぎり妖怪と妖精は似て非なるものだという印象を受けた。まあ、プーカがあまりにも異質すぎるだけかもしれないが、それを踏まえた上でも妖精に関しては何も情報が無さすぎる。
「なあ、メガネくん。妖精のことについて何か知っているか?」
頼みの綱と言えば、メガネくんだが……
「そうですね、まず先ほどのプーカという妖精ですが——」
あ、え、知ってるのか? いや、この流れだと普通知らないもんじゃないのか? 妖精すらも知ってるって本当にメガネくん何者??
「プーカというのは人々から認識されづらい妖精のようでして、伝承では人に害をなすことも恩恵を与えることもあるそうです」
「そ、そうか。本当にメガネくんは博識なんだな」
「いえ、実はこれに関しては今し方調べました……すみません」
あ、そういうこともできるのね。確かに別に全てを脳みそに叩き込んでおく必要ないもんな。別にクイズ大会でもあるまいし、知りたいことがあったら調べる、至って普通で当たり前のことだよな。ま、その当たり前ができるのが凄いんだけど。
それにしても、人に害をなすことも恩恵を与えることもある、か。もしかしてそれが妖精のポリシーだったりするのだろうか。
「なあ、大天狗。妖怪って人に害をなす存在か?」
「ふむ、そう言われると難しいな。元来人と妖怪は手を取り合って生きておったが、いつからじゃろうな。お互いが疎遠になったのは。いつしか人間は妖怪を畏れ、儂らが距離を置くようになったのう」
「ふんっ、畏れを抱いている内はまだ良いじゃろう。挙句人間は妾ら妖怪なぞ、気にも留めておらんのじゃろう? 全く嘆かわしい」
と天狐が続けた。
お前ら、本当仲良いよな。
「土蜘蛛、お前はどうなんだ?」
「ふむ、我は人の身から妖へと至った存在、人か妖かなぞ些細なことだ」
へー、なんか一つ上の回答きたー。でも、そうだよな。人間が妖を拒絶したからこそ対立は生まれた。人は違うってだけで他者を拒絶しちゃうもんな。でも本当は土蜘蛛の言う通りその違いなんて些細なことなのかもしれない。
ここに、プーカに勝てる何かが、この閉ざされた世界から脱出する為の鍵があるのかもしれないな。
「よっしゃー! とりあえずお前ら、ケルト神殿ってとこに向かうぞ。話はそこに着いてから、いや着く間に考えよう」
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最近深夜に執筆するのにハマってます。暗いと筆が捗ります。しかしそれによって生活リズムがグニャングニャンです。
皆様の生活リズムをお教えくださいまし。(やけにプライベートだなおい
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