第1068話 全てを知る目


「なあ、メガネくんこの世界からどうやって抜け出せると思う?」


 ザシュッ


「そ、そうですねー。以前かけられた妖術は確か方向感覚を狂わせてその場に留まらせるものでしたよね? それで今回は魅力的なものを配置することによってふんっの場に留まらせようとするものだと思われます。だから……あぶな、【無彩魔法】!」


「だから?」


「何処かに出口があるんじゃないでしょうか? そうじゃないと桃源郷とは言えない気がします。どんな物語に出てくる桃源郷も結局は何処かに脱出口があるものですから」


 ほーん、確かにな。


 ザシュッ


 メガネくんらしい賢い回答だな。確かにどこかに出口がある可能性は非常に高そうだ。ただ、三妖の一体である天狐がその程度とは思えない。それこそ、桃源牢獄と併せて方向感覚を狂わせる妖術も使っているかも知れない。


 いや、俺らが知る由もない術や力をいくつも持っているだろう。そしてそれらを巧みに組み合わせられればもう太刀打ちもできない。妖術について詳しい土蜘蛛も大天狗もいない。いや、だからこそこのタイミングを狙ったんだろうな。


 ならば脱出口を探すという消極的で受身な方法では少々厳しいように思われる。仮にその出口があったとしても巧妙に隠すだろうし、そもそもあるのかどうかも定かでない。


 まあつまり何が言いたいかというと、こちらも敵が知らない力を使う他ないってことだ。


 というか、出口を見つけるだけなら今すぐにでもできる。ただ、それだとまた隙を狙われて妖術をかけられるだろうから、完全に元凶を断つ必要がある。まあ、何はともあれ出口を探そうか。


「【全知全眼】」


 俺はこの世界に空間に焦点を合わせた。


 その結果、とても沢山のことが分かった。というか、なんでこれを最初からしなかったんだろうか、というくらい簡単に欲しい情報が分かってしまった。


 出口はおろか、この術の構造や弱点、さらには妖力の供給源まで、全て見通すことができたのだ。あれ、このスキルふっつーにチートじゃね? ナーフされないよな??


 ん、でもどうやって攻撃すれば良いんだろうか? 普通に殴っても意味なさそうだよな。もっと魔力的な攻撃手段の方が有効に思える。


 とは言っても俺の魔術は死骸魔術で攻撃用って感じじゃ無いし、かと言っても俺のよく使う魔法である殲爆魔法はゴリゴリの物理よりだし、最後の魔法の無彩魔法はメガネくんの方が使える始末だ。


 だから、有効な魔法的攻撃手段が……


 ん、そうかメガネくんの方が使えるならそれを使えば良いのか。


「【仙術】、技生成。よし、メガネくんちょっとこっち来てくれるかー?」


「は、はい! ちょっと待って下さいね。えいっ! ……はい、何でしょう?」


「ちょっと俺と一緒に魔法を使って欲しいんだが、いいか?」


「は、はい。そりゃいくらでも撃ちますよ?」


「よし、じゃあ無彩魔法のジ・イクリプスを頼む」


 この魔法はこの世界にきてメガネくんが俺に見せてくれた魔法だな。


「【双乗詠唱】、いくぞ?」


「「【無彩魔法】、ジ・イクリプス!」」














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