第1067話 桃源牢獄
俺たちが既に捕らえられているということだけを伝えた天狐はその姿を消してしまった。
「それにしても桃源牢獄、か……」
桃源郷、それは理想郷を意味しユートピアとも言ったりするよな。その牢獄ってことは、
「もしかして私たちの理想を見せつけることによって永遠にこの場所に留まらせる、そんな妖術かもしれませんね」
俺の言いたいことをメガネくんが言ってくれた。
それにしても俺の桃源郷って何なのだろうか。人生のゴールとは何なのだろうか。今はこうしてゲームをしているが、一生ゲームをし続けるわけでもないだろう。じゃあ、俺の桃源郷ってなんだ??
「あ、陛下! 向こうから人がやって来ますよ! 敵でしょうか!?」
人、か。もしかしたらその人が俺の理想郷の鍵なのかもしれない。このゲームが俺の知り得ない深層心理を解読して俺にまだ見ぬユートピアを教えてくれるというのなら、少しは見てみたい気もする。
そしてもしここが本当に桃源郷というのならば永遠にここにいても良いとさえ、思うだろうな。
「ん? どうやら女性みたいですね。際どい格好をしています。もしかしてサキュバス的なノリなのでしょうか?」
ということは、この桃源牢獄も結局は一般大衆向けの、こんなので喜ぶんだろ的な感じか。残念ながら俺は女に興味はないんだよな。ん、待てよ、
「メガネくんってもしかして女性に憧れ抱いてたりする?」
「へ? いや、べ、別にそんなものは抱いておりませんよ! 私が憧れ、敬愛するのは陛下だけです!」
「そうか、なら大丈夫だな」
この時点でこの牢獄が俺らの深層心理を読んでいるわけではないと確定したな。じゃあ、さっさと出ますか。ちょっとは期待したんだけどな。俺の理想を教えてくれるかと思ったのに、結局は自分で見つけなさいってことなんだろうな。
ザシュッ
「あっ!!」
斬った感じはかなりリアルで、一瞬本当の人間を斬ったかもと思ったが、血は飛び散らず、その体は霧散してしまった。まあ、そりゃそうだろうな。つまりは全て幻術ということだ。
「メガネくん、敵がリアル過ぎてちょっとグロいかもしれないが全て現実だ。というかこの世界にいやゲームにリアルの人間がいるわけないからな。心を殺して立ち向かうぞ」
「は、はい……」
ん、ちょっと気分が落ち込んでいるように見えるな、メガネくん。もしかしてリアルな人間の血とか見るの苦手だったりするのかな? あ、でも血は出ていないから関係ないか。
「よし、じゃあチャチャっと脱出しちゃいますか!」
……あれ、そういえばこれってどうやって出るんだろうか?
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皆さんの理想郷はなんですか??
教えてください♪
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