第1066話 眼鏡と天狐


 土蜘蛛と大天狗の二人を石碑破壊に向かわせた俺たちは、二人のんびりアフタヌーンティーを堪能していた。因みに、メガネくんが何故か午後の紅茶セットを持っていたからそれを使わせてもらっている。これに関しては有能と言って良いのか?


 因みにお茶はとても美味しい。


「陛下、天狐の件ですが殆ど目撃情報は確認されていないみたいですね。数件ある報告もガセだったり憶測が多分に含まれていたりとどれも信用に値するものではありませんね。やはりかなりレアなようです」


「そうかー、やっぱりそう上手くはいかないよなーもう一体の三妖に関しても厳しいよな?」


「はい、申し訳ありません……」


「いや、謝ることじゃない。そもそも無理を言っているのは俺の方だからな。この世界は現世に比べてプレイヤーの人口も少ないんだ。集まる情報も少なくて仕方がないよ」


 ただ、こうなってくると手詰まり感が拭えないよな。次にどうすれば良いのか、俺がいかにメガネくんに頼っていたかが突きつけられる。


 思えば今までずっと受動的に生きてきた気がする。このゲームを始めたきっかけも、死に続ける理由も、何もかも。俺もメガネくんのように自らの人生を決められるようなそんな人になりたいな。


 だけど、こんなことを思っている時点でもうなれないのだとも思うな。


「それにしても遅いですね、二人とも。この世界の石碑という石碑を全て壊してきているんでしょうか?」


「そうかもな。お互いに絶対に負けたくないだろうしな」


 紅茶もすっかり冷めて、二人のどっちが勝つのか予想を二人でしていると、突然空気が変わった。そして、俺たちの目の前に大きな魔法陣が出現した。


「クックック、漸くあの忌々しい長鼻と蜘蛛野郎がどこかいったわい」


 そこから現れたのは、無数の尻尾を持つ、巨大な狐だった。そして俺は確信した。間違いなくコイツが天狐だと。


 まさか向こうから直々にお出まししてくれるとはな。ラッキーにも程があるぜ。二人がいないのは残念だが、別に俺たちだけでも対処はできるはずだ。


「ほう、その目は妾をも喰らおうという目じゃな。しかし、妾をあの長鼻と一緒にするでないぞ? あの馬鹿の様に人間如きにこの妾が負ける訳はないのじゃ。であるから、ゆっくりとそこで死ぬまで待って居れば良いのじゃ」


「【殲爆魔法】、マテリアルボム」


 長々と喋り続ける天狐に対して俺は、問答無用で殲爆魔法を放った。


 が、しかしその爆弾は天狐をすり抜け遠くの方で爆発した。


「おー怖いのう、怖いのう。じゃが残念じゃったのう。今お前たちが見ているのは妾の幻影じゃ。お前たちはもう妾の手の中にいるのじゃ。もう抜け出すことはできぬぞ? この桃源牢獄からはの。ヒャーッヒャッヒャ!」


「桃源、牢獄……!?」

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