第1064話 一体の妖
「ふむ、天狐の居場所か……」
そう言うと、大天狗は難しい顔をして黙り込んでしまった。
「おいおい、まさか同じ三妖のクセして知らないとか言うまいな?」
これにはすかさず土蜘蛛が突っ込む。これに関しては俺も全くの同意見だな。天狐に関しては完全に大天狗に任せておけば大丈夫だと高を括っていたのだが……
「そのまさかじゃ。儂は天狐の居場所を知らぬ。と言うか、恐らくこの世界の誰も知っているものはおらんじゃろうな。なんせ、天狐はとても用心深いやつだったからな。常に儂らの寝首を掻こうとしておったし、儂らのことを一度たりとて信用したことはないだろうな」
ま、まじかよ……三妖と言っても仲良くはないんだな。
恐らく、俺みたいに万が一三妖の内一体を従えても、そこから芋づる方式に従えさせない為の措置なんだろうな。もし、三妖がズブズブの関係で仲が良かったら、常に固まって行動してそうだし難易度的にそれはそれで問題か。
「じゃ、じゃが安心せい。奴は必ず自ら姿を現すじゃろう。儂らを確実に倒せる準備が整えば必ず来る。奴はそう言う妖じゃ」
いやいやいや、そう言う妖じゃ。じゃなくて、その準備をさせない為にも今から叩きに行こうとしてるんだろうが。
「まあ、分かった。一先ず天狐については分かった。じゃあもう一人の方はどうなんだ? 三妖って言うんだからもう一体いるんだろ? お前クラスの妖が」
「……」
「おい、まさか知らねーとは言わないよな?」
「そのまさかじゃ。奴は儂に姿を見せたことすら無いからのう。儂もすっかり忘れておったわい」
まじかよ、この大天狗使えなささすぎるだろ……全ステータスがSTRにブッパされてるだろ絶対。
「じゃ、三妖についての情報は一切無いということか」
「む、儂の情報ならいくらでもくれてやるぞ?」
「いらねーよ!」
これは完全にアテが外れたな。芋づる式に従えさせることを防ぐどころか、情報すらくれないとは、運営さんはさぞかし三妖が重要なんだろうな。
これは逆説的に三妖をなんとしてでも攻略しろ、というメッセージなのかもしれない。
「メガネくん、これからは三妖、天狐に関する情報を重点的に集めてくれ。その他のものは後回しで大丈夫だ」
「はい! かしこまりました」
「土蜘蛛と大天狗は強い妖力を感じたら直ぐ教えてくれ、それが妖か人間か場所かは問わない。それで三妖に会えたらラッキーだし、会えなくても妖力を稼げるからな。分かったか?」
「あ、あぁ。ただ一ついいか?」
俺が全体にこれからの方針を指示していると、土蜘蛛が口を挟んできた。
「なんだ、どうした? もっと良い方法でもあるのか?」
「いや、そうではなくて……その、もうあるぞ?」
「は?」
「ほら、この石碑、かなりの妖力が溜まっているぞ?」
ま、マジ……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます