第1056話 黒い箱
二人組の天狗を取り押さえ、土蜘蛛に手足を縛らせて地面に転がした。さて、今までの不可解な事件の全貌をお話ししていただこうか。
って、ん? こっちの世界に来てからなんかずっと拷問していないか? これじゃあまるで俺が拷問好きのサディスティックな奴に映らないか? ……でもまあ魔王ってそういう生き物か、ならいいや。
「お、お前ら! こんなことをして許されると思っているのか!」
「そうだぞ! ここは天下の天狗様の御膝元だぞ、分を弁えろ!」
ん、ちょっとまだ状況が分かっていない方が二名いらっしゃるようですね。じゃあまず最初は小手調から行くとするか。
「【級水……ちょっと待てよ」
妖って体の中に水分ってあるのか? 俺は級水支配で体内の水分を攪拌させて体調を悪くしようと思ったのだが、ふとそんな疑問が湧いてきた。
ってか人間とどのくらい違う構造をしているのだろうか。天狗みたいにパッと見人間の妖怪ならまだしも、幽霊みたいな妖だっているだろう? そいつらまでも人間と同じ構造だとは思えない。
それに、彼らが水分補給をしているとこなんて一度たりとも見たことがないし、想像つかないぞ? 一度しっかり分析してみるとするか。
「【全知全眼】」
俺はスキルを使い二人の天狗の体の内部へと意識を集中させた。これは別に体の中を透視しようとしているわけではなく、もっと本質的な機能であったり状態であったりの情報を取得しようとしているのだ。その結果分かったことは、
「何もない?」
いや、分かったことが何もないんじゃなくて、何もないことが分かったのだ。うんってか、本当に何もないぞ? 何もないっていうのは少し語弊があるのか? 何もない状態がある、って感じなんだ。ブラックボックスがそこにある、見たいな状態になってる。
まあ、ファンタジーゲームの妖怪だからこれでいいのか? でも痛みとかどうやって感じるんだ? これじゃあ拷問しようにもできないじゃないか。
「メガネくん、ナイフってあるか?」
「ふぇ? は、はいこちらに」
「ありがとう」
グサッ
俺はメガネくんから借りたナイフを天狗の鼻に突き刺してみた。すると、
「痛っ! な、何をするのだ貴様! これがどういうことだか分かっているのか!」
天狗はちゃんと痛がった。つまり痛みを感じることはできるということだ。ただ、痛みを感じる仕組みは彼らの中には無かった。つまり、痛そうなことをしたら痛がる、ってことでいいのか?
じゃあ仮に息が詰まりそうなことをしたら?
「……何をしている?」
天狗の鼻と口を押さえてみたが何も起きなかった。もしかしたら妖はそもそも呼吸をしていないのかもしれない。
妖と人間って似ているようで全然違うんだな。ってことは有効な手段もまた全然別物になってくるはずだ。これを知れてよかったな。俺はどうも対人間や対生物に特化しているようだ。この世界ではまた全く別の理をインストールしなければならないようだな。
よし、じゃあやっと拷問できるな。
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