第1048話 領地の主

お忘れかもしれませんが、グリューグル視点でございます。

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 俺様が構成員を配置してからどれくらいの時間が経っただろうか。もう、俺の領地内には目当ての奴はいないんじゃないか、何度もそう思った。だが、運は俺を味方してくれたようだ。


 突如としてダンジョンが形を崩し始めた。本来ならばあり得ないその光景に、聡明な俺様は直ぐにピンときた。遂に来たか、と。


 しかも、俺の獲物はダンジョンを破壊できるだけの力は持っているらしい。ますます俺様の配下にふさわしいじゃないか。


 ダンジョンが跡形もなく消えた先に視線を移すとそこには三人の男がたっていた。一人は平凡そうな男、もう一人はメガネをかけた貧弱そうな男、そしてもう一人は手足の長い、異様なオーラを放った男。ふむ、コイツか。


「ダンジョン攻略おめでとう。このダンジョンをクリアしたのは貴様が初めてだ。そんな力を見込んで、招待してやろう。どうだ我が軍門に下らないか?」


 手足の長い薄気味悪い男は、不敬にも俺を見下すような態度を取った。まあ、ダンジョンを攻略して気が大きくなっているのだろうな。ふっ、直ぐに上には上がいることを痛感するだろうよ。


 じーっと俺を見た後、その男は遂に口を開いた。


「……貴様は誰だ?」


「おっと、これは紹介が遅れたな。俺様はこの領地の主、グリューグルだ」


「領地の主、か。くだらんな。失せろ」


「はっ!?」


「目障りだと言っておるのだ。さっさと視界から失せろ。さもなくば……」


「おいおい、自分の立場がどうなってるか知っているのか? お前らはもう既に囲まれているんだよ。選択肢は二つに一つだ。ここで野垂れ死ぬか、俺様の配下になるかだ」


「ふむ、貴様には見えていないのだな。もう一つの選択肢が、」


 そう言って男は剣を抜いた。どうやら徹底抗戦のつもりのようだ。どうせ配下にするなら穏便な手段で、と思っていたのだが、剣を向けるのならば仕方がない。


「お前ら!」


 俺様の一声で潜伏していた構成員が姿を現す。この数の前には何もできないだろう。


「ふっ、自ら立ち向かう気概も無いと来たか」


「へっ、俺様が出る幕もないんだよ! お前ら、やれ!」


 男を完全に囲んだ組員たちは一斉に、男に襲いかかった。さあ、何秒持つかな? この波状攻撃に耐えられる奴は……


 スパンッ


「はて、もうこれで終わりか? 久方ぶりの陽光の下、もっと体を動かしたいのだが……もう終わりか?」


 なんと一瞬にして俺様の構成員がやられてしまった。あり得ない、まさか、こんなことが有り得るのか?


 だが、あのダンジョンを攻略したのだ。構成員がいくらいたところで無駄だったのだろう。ならばこの私が直々に出迎えてやろうじゃないか。


「出てこい。牛鬼」

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