第1047話 最奥の盃
土蜘蛛を仲間に引き入れることに成功した俺たちは、現地民いや現地蜘蛛の案内によりサクサクとダンジョン内を踏破していった。
この案内役は戦力としても一端で普通にメガネくんと同じくらい活躍してくれた。というか、メガネくんがどこか調子が悪そうに見えた。もしかしたらずっと屋内にいて日光に当たっていないから気が滅入ってしまったのかもしれない。
そして、ついに俺たちは一つの祭壇の前まで辿り着いた。
「ここが、最奥なんだな」
「あぁ、我の感知がそう言っておる。我を呼び出したやつがどんな奴かは知らないが、必ずやこの手で切り刻んてやる」
土蜘蛛は自分を勝手に呼んで勝手に使われてたのがどうも気に食わないらしい。本人曰く、それに疑問すら持たず従っていた自分も許せないらしくそれも相まって怒っているようだ。
まあ、呼び出した時に疑問を持たれないような何かしらを施されていたのだろうから仕方ないよな。あと、今も俺に従っている状態なんだがそれはいいのか? とも思うが困らせそうなので聞かないでおくことにした。
目の前の祭壇には、石でできた大きな盃のようなオブジェクトが鎮座していた。ここに何かを捧げろ、ということなのだろうか。
「これは……」
俺が頭を悩ませていると隣で土蜘蛛が何かに気づいたような反応を見せた。因みに、メガネくんはボーッとしながら虚空を見つめている。
「これは恐らく妖力を溜める盃だな。存在するだけで周囲から妖力を吸い取り、溜めた力で強力な妖を呼ぶ、そんな道具といったところだな」
「つまりはお前もこれで呼び出されたってことか?」
「あぁ、恐らくな」
ということはこれを壊せばこのダンジョンでのやるべきことっていうのは終わりだな。なんかもっと妖を倒しまくって、というのを想像していたが……いや土蜘蛛を仲間にしただけでも上出来か。
「ん、そういえばこれを壊したらお前は大丈夫なのか? 元の世界に戻されたりしないのか?」
「ふんっ、その心配はない。我とこの盃には何の繋がりもないし、そもそもこれは吸う力と呼び出す力しか持っておらん。我を戻すことなど不可能な話だ」
「じゃあ、遠慮なく」
バキッ
俺は肘で思いっきり盃を真っ二つにした。すると、
「ん?」
体になんらかの力が一斉に入り込んできた。それも、かなりの量。
「ほう、この盃、かなりの力を溜め込んでいたようじゃな。恐らくこれを置いたものがケチだったのだろう。おかげで我にも幾許かの力が流れ込んできたぞ」
んーでも妖力っつったってあんまりピンとこないな。何かに使えるわけでもないし。
俺への力の流入が終わると、俺たちは眩い光に包まれた。恐らく、ダンジョンが消滅するのだろう。あーあ終わってしまったな。何事もクリアしてしまう瞬間は少し寂しいものだな。またメガネくんに次の行き先を尋ねないと。
光が収まると俺たちはダンジョンへと入る前の場所へと戻ってきた。久しぶりの日光だな。ん、なんだか人集りができてるな。どこかでフェスでも開いているのか?
「動くな!」
気づけば俺たちは包囲されていた。どうやら人集りの中心は俺たちみたいだった。別にフェスを開いた覚えはないんだけどな。
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