第1043話 初夏の運
別視点です。お気をつけください。
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俺様の名はグリューグル、妖の隔世における四大勢力の内の一つ、ゴーストオブナイツのリーダーだ。
この四つの勢力はほとんど同じ力で拮抗していたのだが、この度その均衡に我らが終止符を打つことができる。始まりは偶然だったのだが、運をも味方するこのグリューグルにとって必然とも言える。
なんと、この領地にとんでもない逸材が紛れ込んだというのだ。そして、どの陣営にも属していないという奇跡。この機を逃さずして何をするというのだ。
今はまだ光る原石だが、ここから私が磨けば必ず化ける。そしてその暁にはこの隔世を……
「報告があります!」
ほう、ようやく見つかったようだ。思ったよりも時間が掛ったようだな。
「入れ」
「捜索を命じられた二人組の男についてですが……領地内を隈なく捜索した結果、該当人物は見つかりませんでした」
「なにっ!? 隅々まで探したのかっ!?」
「もちろんでございます。今も尚捜索させておりますが、もうすでに何周もさせておりますゆえ……」
「出入り口は見張っているのか?」
「は、常に関所には人員が配備されている状態にてございます。彼らからの報告は今のところございません」
なんということだ。我が軍の人員を持ってしても見つからないとは一体どういうことだ? この敷地内に入って私が捜索を命じる前に出たというのか?
いや、それは考えられない。無意味にも程がある。では、どこに? 転移が使える妖でも従えているのか? あれだけの妖力を感じたのだ、従えていてもなんら不思議はない。だが、それほどの力を使って私が気づかない、構成員が見ていない、なんてことがあるのか?
いや、ない。ならば……
「おい、ダンジョンは探したのか?」
「ダンジョン、ですか?」
「ダンジョンは探したのかと聞いているだろう!」
「はっ、ダンジョンはまだ捜索しておりません。しかし捜索と言いましても……」
ニヤリ、と私は心の中で笑みを溢さずにはいられなかった。なんせ、あそこはダンジョンという形をとった人喰い妖怪なのだから。
「良い、別に中に入れと言っているわけではない。ダンジョン周辺とリスポーン地点になりそうな宿へ張り込みをしろ。あそこから生きて帰られるものは誰一人としていないのだ。じっくり待てば駒は必然的に私の手元までやってくる」
「かしこまりました」
飛んで火にいる夏の虫とは正にこのこと、初夏に相応しい結果を迎えられそうだ。
なんせ、あのダンジョン、いや妖はこの領地にいるものから常に妖力を吸い上げ、日に日に力をましている存在だ。そして、外部からやってくる人間の妖力を奪い、更に成長する。
そしてその妖を従えている私にどんどんと力を齎すのだ。
「クックック、貴様の妖力と能力、どちらも頂けるとはなんとも運がいい」
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