第1034話 怪しい妖

昨日の更新分の全話がバグで投稿されておりませんでしたのでご注意ください。(これガチ

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 俺たちは石像二人組を置いて移動を開始した。え、あいつらはどうしたかって? 粘着されたく無かったから足を折って、石化を解除してあげたぞ。優しいだろ?


 そんなことよりも、俺たちは今、ある場所に向かっている。それは妖を使う為に必ず寄らないといけない場所らしい。


「ここがかなめどこかー」


 心優しき男性二人組に教えてもらった地点に辿り着くと、そこには大きな旅館のような建物が聳え立っていた。大きいと言ってもお城ほどではないが、この妖の世界観と相まってウチの魔王城よりも迫力を感じる。どこか圧迫感があるような、そんな感じだ。


 お邪魔しま〜す、と心の中で呟きながら扉を開けるとそこには大勢の人で賑わっていた。一階には受付があり、酒場があり、依頼受注の為の掲示板まで兼ね備えられていた。まるで冒険者ギルドの妖版だな。


「あ、へい……あちらでどうやら受付を行うみたいですよ! いきましょう!」


 他のプレイヤーから余計な不信感を抱かれない為にメガネくんには陛下呼びを一時的に辞めさせた。本人はとても困っている様だが、頑張って慣れて欲しいものだな。


 受付の前まで来ると、そこには見た目の綺麗な女性が座っていた。ここの受付は人間なのか? と思ったがよく見てみると、下半身に向けて薄らと透けている。恐らく妖が人間の好きそうな見た目に擬態しているのだろうな。


「今回はどちらの御用ですか?」


「はい、この度初めてこの世界に降り立ちましたので、妖の従え方についてご教授頂きたくやって参りました」


 ん、妖が妖の従え方を教えるってどうも違和感があるな。普通、誰かに従うのは嫌うものじゃないか?


 仮に俺たち人間の立場で考えてみると、人間世界に土足で多種族、例えば恐竜が入ってきて、その恐竜に人間自身が人間の支配の仕方を教えているみたいな感じか? 確かに恐竜と真っ向に立ち向かうのは無理だから潔く自分達を差し出している、と言うのならばわかりやすいが……


 もしかして妖にとって俺たち人間は


「まぁ、初めてのご訪問というわけですね! では、この世界にいる妖精を従える為の方法をご紹介させていただきます」


 俺が考え事をしていると早速レクチャーが始まったようだ。


「妖精はこの世界の至る所に存在しております。ですので見つけ次第、戦いを挑んだり、説得をしてみたりすることによって妖精さんを一時的な共闘関係に持ち込むことができるのです!」


 ふーん妖目線では妖のことを妖精と言っているのか。本当に妖精がたくさんいるのか、はたまた……


 それにしてもメガネくんは真剣に話を聞いているな。真面目なのは大変素晴らしいことだが、現実世界でも詐欺とかに引っかからないか心配だな。


「ですが、恥ずかしがり屋なので見つけるのには少々手こずるかもしれません。そんな時は、この甘い線香をお使いいただけるとその匂いに釣られて妖精さんたちが寄ってきます。困った時はアチラのカウンターからお求めくださいね!」


 早速営業か、やりよるな。


「そして、最後に魔力測定を行いたいと思います。魔力の強さや性質によって相性の良い妖精と悪い妖精がいますからそれのご案内をさせていただきます。こちらに手をかざしてください」


 そういうと受付の人、いや妖は一つ大きな水晶を取り出した。そこにメガネくんが手をかざした。


「まぁ、これは凄い魔力ですね! しかも光と闇という相反する属性が二つとも備わっていますよ! これは非常に希少な妖精が寄ってくるかもしれません! では、素敵な冒険ライフをお楽しみください! あ、そちらのお客様も魔力測定をなさいますか?」


「あ、いえ私は大丈夫ですよ。以前計測してもらったので。今日はこの子の付き添いなんです」


「そうですか。では、またのご利用をお待ちしております」


 そうやってメガネくんのこの世界におけるチュートリアルが終了した。無事何事もなく終えられたのは良かった。が、


 最後、俺に断られた際に一瞬、黒いオーラを出したのを俺は見逃さなかった。出口が見つかってないことといい、さっきの受付の妙な胡散臭さといい、この世界には確実に何かある。


 俺は半ば確信を抱きながら、その場を後にした。

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