第1033話 妖の世界


「……この世界にはありとあらゆる妖が存在します」


 ようやく観念したのか、男たちは焦点の合わない目で話し始めた。


「そのくらいはバカでも分かるだろ。その先の、お前らが言ってたルールについて手短に言え、さもなければ石化解除して指を切り落とすぞ」


「は、はいっ! ここのルールとは正しく、その妖を使うことにあります。先ほどの魔法攻撃を無効化したのも、逆にそれをコピーして撃つことができたのも全て妖の力なのです!」


 ほう、妖を使うとはそういうことなのか。そして、先ほどの男たちの謎が分かったぞ。メガネくんの決して弱くはない魔法を耐えたことも、それと全く同じもの放ったのも全て妖のおかげというわけか。


「妖はお前らでも簡単に捕まえることができるのか?」


「はい、妖を従えるには服従と懐柔の二種類がありどちらでも妖の力を借りることができます。しかし、服従の場合だと、一度のみ、懐柔は妖の気分次第で複数回使用できる場合があります」


 ふむ、そうなってくると妖はやっぱり強いんだな。コイツらのレベルで複数体従えることができて、その上その効果はほぼ絶対のように見える。この世界を出たらどうなるかはわからないが、確かにこの世界においては妖を従えていないと話にならないということはよく分かった。


「じゃあ、その妖は全部で何種類くらいあるんだ?」


「そ、それに関してはまだ全ては見つかっていないとされており、現段階でも百種類以上は確認されております」


 そんなにいるのか……ならば当然その中に強い妖、弱い妖、必須な妖など、色んな奴らがいるんだろうな。これは面白くなってきたな。


「それで、外の世界でも妖は使えるのか?」


「そ、それが……」


「ん、なんだ?」


「それがまだこの世界の出口が発見されていないのです……」


「は?」


「この世界に落ちたプレイヤーは皆この牢獄のような世界に囚われてしまうのです。入って直ぐに死に戻りしたプレイヤーならともかく、一度リスポーン地点をここにしてしまったら最後、もう二度と戻ることはできないのです」


 ふーん、まさかそんなことになっているとはな。だからこんな初心者狩りなんて蛮族みたいなことしてるんだな。


 でも流石に出口が無いということはないだろうから、妖を集めつつ出口を見つけなければいけないようだ。


 魔王が妖の世界に幽閉されるなんて笑えない。


「メガネくん、基本的に妖については君に一任する。どんな妖にするか、どちらの方法で従わせるか、それら全てを君に委ねよう。逐一情報を集めながら最適とまでは言わないがいい感じの妖を選んでくれ」


「は、はいっ! ありがとうございます!」


 ありがとうございますって、俺はただ面倒臭いことを押し付けているだけなんだけどな。


 後はまあ、なんとなく妖について嫌な予感がするのだ。確かに妖を従えてその力を借りる、というのは一見自然な流れのように思える。だが、それにしてはあまりにも力が強すぎないか?


 スライムを一匹倒す程度ならまだしも、あの魔法を食らってもノーダメージ、そしてそれを使用してもノーリスク、というのは俄かに信じ難いのだ。


 それがこの世界のルールというのならば受け入れる他ないだろうが、ここにいるプレイヤーは何か大きなものを妖たちに差し出しているのかも知れない。


 ん、じゃあメガネくんに押し付けんなって? それとこれとは話が別だろ〜。俺は魔王で彼は部下なんだから。それにもし彼に何かあったら全力でサポートするし問題ないだろう。

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