第1032話 拷火の石
男二人組を拘束した俺は、早速尋問しようとしたその時、背後でドサっ、という音が聞こえた。
咄嗟に振り返ると、そこには新たに落ちてきたプレイヤーの姿があった。
不味い、この状況を見られてしまうと色々と余計な勘ぐりをされてしまう可能性がある。ただでさえ、順番を守らないという日本人としてあるまじき行動を取っているというのに、益々ヘイトを買ってしまう。
プレイヤーに扮している時はなるべく目立ちたくない。ここは三十六計逃げるに如かず、だな。残りの三十五計については一ミリも知らないのだが。
「メガネくん、走るぞ」
小声でそう伝え俺は全力疾走を開始した。なんか、メガネくんと走ってばっかりな気がする。ってか、そもそも一緒に走るより俺がメガネくんを担いで走った方がスピードとしては絶対に早い。
そして気づいたからには実行したいのだが、今は石像二体という余分な体重を抱えてしまっているからメガネくんを抱えるのは積載量オーバーとなってしまう。もう、いっその事どこか遠くへ投げ飛ばしたい。
「はぁ、はぁ、はぁ」
なんとか距離を取ることに成功したようだ。あ、因みにこの息切れは勿論メガネくんだぞ?
ドスン
俺は石像二体を地面に放り投げた。本人達はうっ、という声を漏らしたのだが、感覚や触覚、痛覚などはあるのだろうか? 拷問ついでにちょっと試してみるか。
「なぁ、この世界のルールについて教えてもらえるか? 俺らはお前らの知っている通りここに来たのは初めてなんだ。色々と教えてくれよ、先輩さん?」
仰向けになっている石像(首から上は生)に向かって俺がそう言うと、あろうことか、二人組は反抗してきた。
「あぁん? 何言ってんだ! それが人に物を頼む時の態度か? 教えて欲しいならさっさとこの石をなんとかしろ!」
ボゴッ
俺は試しに一人の足を踏んづけて折ってみた。どうやら痛みはないみたいだな。まあ確かに石になっているから神経も通っていないのか。
「おいおい、状況が分かっていないのはどっちだ? 助けてもらいたくないのか? どうせ死んでもリスポーンできると思ってるんだろうが、俺は絶対にお前らを殺さないぞ? 今は痛くないかもしれないが、この状態で石化を解除したらどうなるかな?」
「ひっ!」
「さぁ、教えてくれる気になったかな?」
「だ、誰がお前みたいなサイコ野郎に教えるかっての! ここには俺らの仲間が沢山いる! こんなことをしてると今に応援がくるぞ!」
まだ反抗の意思があるみたいだな。一瞬ビビってたから行けたかと思ったんだが、やっぱり痛みがないといくらでも吠えられるか。
バゴッ
「手って脆いんだな。指一本折るつもりが間違えて左手半分砕いてしまったぜ。じゃ、とりあえず左手だけ石化解除してみよっか」
俺がそのまま左手を見つめ石化状態を解除すると、
「イデデテテテててて!! ギブ! ギブ! 分かった! 教えるから! 石に、石に戻してくれ!」
ふっ、さっきは解除しろって言ってたくせに都合の良い奴らだな。あ、そうだいいこと思いついた。
「【殲爆魔法】、ナパームボム」
俺は二人の石像に爆弾を投下した。とは言っても威力は抑えめで少し手足が吹き飛ぶくらいだ。メインはその爆発によって生み出された炎の方だからな。
ナパームは確か薬品の力で炎が消えづらくなっている爆弾だったはずだ。それを俺のスキルでカスタムしたのだからこの炎はちょっとやそっとの力じゃ消えないようになっている。
今、二人は石だから熱くないだろうが、もし、この状態で石化を解除したらどうなるだろうか。
「よし、じゃあ教えてくれるか?」
「「……はい」」
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