第1024話 邪の力


 邪の祠に降り立った俺は、違和感を感じながらも爺さんに心界支配を改めて教わる為に歩みを進めた。以前きた時よりも強くなっている今の俺では正直、邪の祠を攻略することなんて簡単なことだと思っていた。


 しかし、会敵をした瞬間、違和感の正体と己の過ちに気がついてしまった。


 なんと、敵が明らかに強化されていたのだ。


「グルゥウウウァアアアオォオオオ!!!」


 そこには三つの目と、二組の腕を持った巨人がいた。随分前のことで正確なことは覚えていないが、前回の邪の祠攻略時の最初の敵は確か、サイクロプスだった気がする。


 それに比べて今回は二つの目と腕が追加されている。全く別種のモンスターではなく、以前よりもパワーアップしているような見た目だ。このことが俺の脳内にある一つの可能性を提示してきた。


 もしかして、邪の祠は来るたびに難易度が上がるステージなのか?


 いや、正確には最奥まで辿り着いて再びここに舞い戻った時に敵が強化される仕組みになっているのかも知れない。前回はこんなモンスターを見た覚えはないし、たまたま似てるけどちょっと強そうなモンスターが出現しただけだとも考えにくい。


 これは、最新部まで辿り着くのは容易なことではないかも知れない。前回もそれなりには苦労した覚えがある。


『アシュラ!』


 俺はアシュラを召喚した。目には目を、だ。


『アシュラ、こいつを倒せ。そうしたらコイツの素材を使ってお前を強化してやる』

『はっ、かしこまりました』


 そこから巨人同士の拳と拳の殴り合いが始まった。手数としては三組の腕を持つアシュラの方に軍配が上がるが、なんとパワーの方は若干相手の方が上回っているようだった。


 確かに敵は筋肉が隆々としており、対してアシュラは骨の生まれだからそれに比べると少し劣っているのだろうか。パワーといえばアシュラのイメージだったのだが、上には上がいるのか。


 その後も殴り殴られお互いにノーガードの試合を続けていたのだが、アシュラの方がやはりジリ貧になっているようだった。


『アシュラ、拳はもういい! 剣を使え剣を!』


 だが、そうアシュラには俺が与えた武器がある。それは陸刃の剣と言って一つの大剣から六つの短剣にまでなれる超優れものだ。それをアシュラは勿論、六つの短剣にしてそれぞれ装備した。


 そこからは形勢逆転だった。


 パワーで劣っていたアシュラに武器の威力と斬撃属性が追加され、その上更に短剣分のリーチすら生まれたのだった。ジリ貧だったアシュラが巻き返すには十分すぎるほどのアドバンテージだ。


 ザシュッ!


 最後は敵の三つの目にそれぞれ二本ずつ短剣を刺してフィニッシュした。ふぅ、無事に勝ってくれて一安心だな。だがそれにしてもこのレベルになってくるとアシュラがパワー負けしてしまうとはな。いよいよ従魔の強化もモタモタしてられなくなってきたな。


「【強制進化】」


「従魔:ダークアポストルバジュラ、個体名:アシュラが闇竜鬼アンリュウキに進化しました」

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