第1023話 大罪と対策


「じゃあ、これからもより一層情報収集に励んでくれ。また、人間プレイヤーの動向もチェックして怪しい点があればすぐ報告するように」


「はいっ!」


 そう言って俺は、強化をし終えたメガネくんを送り出した。これからは本当に情報が大事になってくるだろうからな。是非とも頑張って欲しいところだ。


 それと同時に、防御のことも考える必要がある。魔物プレイヤーという大きな一括りの集団の中には当然人間サイドにつく輩も出てくることだろう。だから魔物プレイヤー達に公開する情報もある程度吟味しなければならない。


 まあ、それも追々でいいだろう。基本的にはノータッチで済む話だ。


 問題は我が軍の強化に関してだ。


 以前、メガネくんと喋った時に七大罪スキルをプレイヤーが取得したという情報を得た。これから先、どこかのタイミングで必ず勃発するであろう人魔大戦においてその七大罪スキルというのは大きな意味を持つことになるだろう。


 だから取られていない残りのスキルを独占する、ということも考えてみた。


 しかし、俺が持っている憤怒を獲得した時を思い出すと、七大罪スキルを得るにはかなりの代償が伴うことが予想される。俺はハーゲンが殺された怒りによってそのスキルを得たのだから、他のスキルも同等かそれ以上の感情が必要になる。


 真偽のほどは分からないが、嫉妬を獲得したプレイヤーも恐らく物凄い嫉妬の念に駆られていたのだろう。


 それらを考慮すると、七大罪を血眼になって探すことの利点が薄れてくるように思える。俺だって従魔一人一人にスキルを持たせようと思ったこともあったが、言うまでもなくそれは危険だろう。


 それに、俺らの従魔にそんなものを持って欲しくないという気持ちもある。人間じゃないのだから汚れる必要はないし、そんなことをする必要がないくらい強くなればいいだけの話だ。


 つまるところ、俺と従魔をいい感じに育てていく、と言う基本方針は変わらない訳だ。


 ただ、それだと人間プレイヤーが残り全てを揃えてきたらどうする、と言う問題が発生する。これに関してはしっかりと対応策を用意している。それは、心界支配だ。


 心界支配とは俺が破戒僧になった時に、使う資格を得た必殺技のことで、未だに会得できていないものだ。


 これをなんとしてでも、大戦前に使いこなせるようにならなければならない。


 だが会得さえできれば七大罪にも匹敵するほどの力を得ることができると踏んでいる。


 その為に俺が今すべきことは……


「よし、今から邪の祠に行こう!」


 そこには俺に心界支配の存在を教えてくれた爺さんがいるはずだ。もう一度その人の元で教えを請おう。今度は使えるようになるまで絶対に帰ってこないつもりだ。


『ハーゲン!』


 邪の祠は確か大陸を超えた先、海のど真ん中にあったはずだ。かなりの長旅になるだろうが、気を引き締めて向かおう。


 ❇︎


「ふぅ」


 長旅を終え、目的地に到着すると俺は一息ついた。だが、それと同時にほんの少しの違和感を感じた。


 気のせいかも知れないが以前きた時よりも空気が重いのだ。俺自身は間違いなく成長しているから、空気が軽く感じることはあっても、空気が重くなっているとは考えづらい。


 だが、意識を向ければ向けるほど微かに、でも確かに違和感が存在した。


 上空を見上げるとそこには暗雲が立ち込めていた。

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