第1022話 選択と信頼


 その後、特に何事もなく運営によるインタビューは終わった。最後に、これはどこかに出ますか、と聞いたらどこにも出さないという答えが返ってきた。……それだとこれは一体何の為に行われたのだろうか。


 だが、最後の言葉は衝撃的だった。あれがあの場の洒落なのか、本気なのかは分からないが、実行されてもおかしくはない流れだったように思う。


 もしそんなイベントが開催されるとしたら、一体俺はどうなるのだろうか。一応魔物プレイヤーは俺の味方になってくれるってことだよな? それがどうなるかで作戦含め今後の予定が大きく変わってくる。


 いや、確かあの運営は「全プレイヤーを敵に回す」と言っていた気がする。ってことは一応魔物プレイヤーも敵になることを想定していた方が良いだろう。


 もしそうじゃなかったらラッキーだし、その逆で味方になると思っていて敵になったら笑えないからな。


 ただ、そうなってくるといよいよヤバいな。本気で勝てる未来が全く見えない。


 自分の強化だけでなく、従魔の強化ももっとガンガンしていかないと間に合わないだろう。後はメガネくんをどうするかだが……


『ちょっとメガネくん部屋まで来てくれないか?』


 俺はメガネくんを呼び出した。すると数秒も経たずしてメガネくんが現れた。


「いがかなさいましたか、陛下」


 俺はメガネくんを見下ろし、一息付いて言葉を発した。


「メガネくんはどうして俺の部下になろうと思ったんだ?」


 彼とこのような話をするのは珍しい、というか初めてな気がする。だが、これはとても大切なことだ。何故なら彼も一人の人間でプレイヤーだからだ。


「はい、私は陛下を初めて見た時にその強さに感服致しました。それで、陛下のような方の近くに居たいと思い志願した次第であります」


「ふむ、それなら俺よりも強い奴が現れたらソイツの所に行くのか?」


「陛下が他の人間よりも弱い、ということは決して起きないでしょう。しかし万が一そのような事態が発生しましたら……」


 静寂がこの場を支配していた。遮るものは何もなく、ただ俺はメガネくんの言葉に耳を傾けていた。


「もちろん、再び陛下が最強となることができるよう全力でサポートするのみです」


「何故そこまでして俺に仕えるのだ?」


「陛下だからです。私が憧れ、感動したのは他の誰でもない貴方様だからです」


「分かった、ならば俺も信じよう。立て、今から強くしてやろう。いつまでも魔王の参謀が弱かったら問題だ」


「はい!」


「【強制進化】」


『種族:ファントムイリュージョニスト、個体名:ストロンが天魔の使徒に進化しました』


 俺は天使と悪魔の素材をふんだんに使ってメガネくんを強化した。これでかなり戦えるようになったことだろう。


 ん、ってか種族って人間じゃなくてファントムイリュージョニストだったんだ。変な種族だな。


「今日からより一層、頑張ってくれ」


「はいっ!」


「それと、もっと力が必要になった場合はいつでも言ってくれ。後、その方向性とかあったりしても気兼ねなく言ってくれ。分かったな?」


「あ、ありがとうございます!」


 よし、これで大丈夫だろう。メガネくんを信頼するかどうかの最終テストのつもりだったが、そんなことする必要なかったみたいだな。俺はここまで頑張ってくれたメガネくんを信じるし、信じたい。


 もし裏切られたら、その時はその時だな。


 ……そういえばメガネくんの名前ってストロンだったな。すっかり忘れてたぜ。なんか前にもこんなことあったような。

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