第1019話 予定前のアタフタ


 そもそも、インタビューってなんだ? いや、流石に意味は分かるがこの場合においてどう言う意味を持つんだ?


 運営が俺なんかに質問をして得られる情報なんてあるのか? いやまあある、と踏んでいるからするんだろうけどさ……


 俺からじゃないと聞けないことってなんだ? 例えば今さっきまで対応していた従魔についてか? 周りがどのくらいの従魔を抱えているかは知らないが、俺の従魔は少なくはないだろう。


 それか単純に魔王についてか。魔王は一応俺しかいないはずだし、魔王に関して何か聞きたいのであれば必然的に俺に聞く他ない。


 でも冷静に考えれば運営さんは俺を含めプレイヤー全体を監視しているはずだ。一人一人隈なくチェックしているわけではないだろうが、それでもある程度の動向は把握しているはずだ。それなのに俺にわざわざインタビューしにくるって余程のことだよな?


 もしかしたらこのインタビューがこれからのゲーム人生を大きく左右するかもしれない。ちゃんと気合いを入れて臨まなければ。


 インタビュー開始は明日の午後くらいに、と言うことだったが、その日はどうしても脳裏にその予定がチラついて集中できず、すぐさまログアウトしてしまった。


 ❇︎


「ふぅ」


 翌日を迎え、俺は変な緊張感に包まれていた。そもそも俺は人と会うのが苦手だし、コミュニケーションをとるのも苦手だ。家に出ることなんてほとんどないし、最後に人とちゃんとした会話したをしたのなんていつだろうか?


 そんなレベルなのだ。そりゃゲームではある程度喋れるが、それはこの魔王という鎧があったり、最悪どうなっても良いって心の中で思っているからだ。


 それなのに、そのゲームの中でリアルを意識させられて会話するなんて地獄だな。


 あー、俺はいつもこうだ。予定を入れる時は何も考えずに脳死なのに、直前になると急にダルくなる。病院とかもそうだ。予約を入れた段階と実際に行くときのテンションの差が激しいのだ。


 あ、服装はどうしようか。魔王装備のフルプレートアーマーは流石にないよな? 恥ずかしいし、そもそも人と会話をする格好じゃない。かと言って初心者装備を着るのも、え、なんで? ってなりそうだからだめだ。


 消去法で悪魔の装備しかないな。あれはデザイン的には気に入ってはいるが和やかな感じでやはり人と話す格好じゃない。せめて冠だけでも脱ごうかな。あーリアルを意識した途端変に気恥ずかしさが生まれてしまう。


 もういっそのこと魔王完全装備で行こうかな? ……いや、もう普通にそこら辺の店で無難な装備買ってこよ。もう考えるのも面倒臭い。


 そんなこんなで約束の時間になると、魔王の自室の何もない空間に一本の亀裂が走った。それが徐々に広げられ、二人の人間が現れた。


 え、なんか俺よりもよっぽど魔王っぽい現れ方なんですけど……?


「初めましてライト様。運営開発担当の者です。本日はよろしくお願いいたします」


 その二人は全身フルプレートの甲冑を着込んでおり、完全に顔どころか肌一つ見えない格好になっていた。


 え、俺の服選びの苦悩はなんだったの? ってか普通インタビューを甲冑でするか?


 幸先不安な中、とうとうインタビューが開始されてしまった。

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