第1017話 心臓マッサージ
不味い、放射能は物質を汚染するってこと完全に忘れてた。この放射能フルマックス状態の部屋に自分の配下を呼んでしまうとは……
この時ばっかりは俺もスキルを使わずとも世界がゆっくりに見えた。
デトが召喚されていく様を俺はただ呆然と見つめながら何もすることができなかった。
俺は、召喚されて直ぐに戻すことも考えたのだが、それではただ放射能を受け取っただけになってしまう。それじゃあデトが死んでしまう。それだけは是が非でも避けなければならない。
だから俺はある決意をした。
『デト、済まない。頑張って耐えてくれ!』
そう、デトに俺と同じ粒子無効を取ってもらうのだ。もうデトが助かる方法がそれ以外見当たらない。
だが、俺だってただ見ているだけではダメだ。デトを死なせないように適宜回復魔法を撃ち続ける必要がある。撃ち続ける必要があるのだが……
「あれ? どこだ、どこいった?」
回復スキルが見当たらない! 破茶滅茶に選定しまくったせいでどれが回復スキルか忘れてしまった。それに、以前も言ったように、今回の選定は混ぜすぎてどうも攻撃性能が前面に出過ぎている。そのせいでもはや原型が分からなくなってしまっているのだ。
「あ、あった! 確かこれだな。【狂愛開花】!」
これは多分回復だったはず! って、ん? 何をするか選べるみたいだな。HPを回復するだけでなく、バフやデバフをかけることもできるみたいだ。へー、しかもその種類も豊富だな。どれどれ、粒子耐性はない
『ご、ご主人様……』
やべ、危うく狂愛開花に呑まれるところだったぜ。とりあえずはHP回復をして、っと。
『デト、体力が残り少なくなったら直ぐにいうんだぞ? 分かったな?』
よし、ちゃんと報告するようにさせれば俺はその間しっかりとバフの種類を見定めることができる。えーっと、粒子無効はどこにあ
『承知いたしました。ですがご主人様もう死にそうでございます……』
マジか! 忙しいな。とりあえず回復してっと。えーっと粒子無効は……ないな。他にダメージを軽減してくれそうなものとかないか? VIT上げても意味ないし、STRとかも関係ないよな?
あー、くっそ意外と使い勝手悪いじゃねーかよ。放射能に対応できないとかマジでヤバいぞ。
その後も、俺は数多あるバフを調べながらデトを看病し続けた。俺は確か何かの効果でスキルとか称号がゲットしやすくなっているから、俺と比べると粒子無効をゲットするまでにかなり時間がかかっている。
確かに、俺も序盤の頃は無限に死にまくっていた気がする。それを死なずに行おうとしているのだから、デトには本当に申し訳ないことをしたな。いっそのこと殺してくれ、とすら思っているかもしれない。
『デト、大丈夫か? 絶対に終わりは来るからな。だからその時まで絶対に諦めるな。心がやられたらその時がお前の最期だ』
『は、はい!』
終盤はもうHP回復だけにとどまらずメンタルケアも行っていた。そして、ついに……
『ご、ご主人様! 粒子無効を獲得いたしました!!』
『よっしゃあああああああああ!!!』
……あれ、そもそも何の為にデトをここに呼んだったっけ?
俺は物凄い達成感と引き換えに、大きな虚無感も同時に獲得してしまった。
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