第1013話 失念引目
ヤッベー、これは派手にやってしまったな。空気抵抗のことや新しいスキルのことを完全に失念していたぜ。
選定でゲットしたスキルたちに早く慣れないといけないのもそうだが、これからはあまりに無闇矢鱈な選定も控えないとだな。
今回の時間歩行に関してもそうだが、選定したスキルのどれもが対人向けになり過ぎた結果使い勝手が悪くなってしまっている。
例えば以前は単に姿を隠す為のスキルだったものが、統合されて我霞故我になったことで、ただ単に姿を消す、ということがし辛くなったのだ。対人戦には向いているかもしれないが、隠密行動にはあまり向いていないように思う。
今回だって以前だったらハーゲンごと隠して移動するなんてことができたが、今ではハーゲンは野晒しだし、俺も装備を変えるくらいの対応しかできない。
対人性能ももちろん大事だが、十分に攻撃リソースが足りている俺の場合はもっと使い勝手の良い、補助スキルを充実させていく必要がありそうだ。
そんなことを考えていると、
『陛下!』
メガネくんからの連絡が入った。
不味い、これは明らかにクレームだろうな。さすがのメガネくんもメガネが割れるくらいには怒っているかもしれない。なんせ戦場のど真ん中に味方敵問わず爆撃したんだからな。怒られても文句は言えない。
『ど、どうした?』
『今、物凄い爆発があったのですが……これが陛下の言っていた何か、ですか?』
これは完全に怒ってる時のトーンだな。いつものメガネくんならもっと優しい雰囲気を声色から出してくれるのに今日のメガネくんはやけに怖い。
そりゃそうだよな。だって事前に言ってさえくれれば魔物プレイヤーは退避できたかもしれないのにな。これは完全に俺が悪い。
『あ、あぁそうだ。すまない、ちょっと手が滑ってしまったのだ。申し訳ない』
『何言ってるんですか! そんなことよりもあの爆弾陛下が持ってそのまま落ちてきましたよね? 大丈夫ですか、お怪我はないですか?』
え? ちょっと待てこちらのセリフだ。今、この人は一体何を言っているんだ?
『お前、俺が持ってるのが見えたのか?』
『い、いえはっきりと見えたわけではないですが、陛下から連絡があったのと、そのシルエットからなんとなくそんな気がしたのです』
な、何コイツ。凄い通り越して怖いんだが。そんなことあるのか? ってか、そんなことよりも、
『お、怒ってないのか?』
『お、怒る!? なんで私が陛下に怒らねばならないのですか? 怒る理由も資格もありませんよ?』
は、はぁそうですか。なんだか心配して損したな。勝手に自分だけ引け目を感じてるのってなんか勿体無いよな。
『そういえば小競り合いはどうなったんだ?』 『あ、そうでした。陛下の爆撃のおかげで無事終了しました』
おお、それは良かったな。だが、俺としてはただ単純に自分の死亡数を増やしたかったってのもあるから、俺のおかげと言われるのはちょっと違うな。単純に皆が頑張ってくれたおかげでもある。
『ただ、一つ問題があって……』
『ん、問題?』
『はい。魔物プレイヤーのほとんどが俺は頑張ったから褒美を寄越せ、と言ってくるんです。こ、これについてはいかが致しましょう?』
あ、やっべ。何にも考えて無いや。
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