第1006話 巨悪の城


 悪魔の城の庭園に配置されていた巨大な悪魔を倒し終えると、俺はソイツの心臓を抜き取った。一体くらいなら別に大した労力でもないからな。


 そういえばコイツの能力を見る前に倒してしまったな。どんな能力がもらえるのだろうか、最悪、研究所の爺さんに寄付してもいいかもしれない。折角選定したばかりなのに、使わないスキルが増えるのはちょっと嫌だ。


 にしても悪魔の城って言っても城ごとに結構雰囲気が変わるんだな。前の城にはこんな庭園なかったはずだし。この先にはどんな敵が待ち構えているんだろうか? 少しのワクワク感を胸に俺は城内へと侵入した。


 ッドン! ドシン! ドガーン!


 城内で数回戦ってみて分かったことがある。どうやらこの城は巨人の悪魔が仕切っているようだ。まあ、巨人って言ってもピンキリだが、全体的に数よりも個を重視している風潮がある、といえば分かるだろうか?


 一人一人が屈強で力を持ち、それぞれの能力も特殊で強い、そんな感じなのだ。


 でも、個人的には数で圧倒された方が怖かったから、正直選定した後の俺じゃ、全く脅威になり得ない。


 最初の方は、一人一人にしっかりと向き合ってスキルを使って戦っていたのだが、途中から作業感が増してしまい退屈になってしまった。そんな時、一つのスキルが俺を救ってくれた。


「【運之指弾ラッキーバレット


 そう、このスキルが俺を退屈から解放してくれたのだ。このラッキーバレット、略してラキバレは面白い効果を持っているのだ。


 使用条件として手を銃の形にして——そう、子供たちがよくするアレだ。もしかしたらアイドルなんかもするかもしれないアレだ——敵に向けて撃つだけと言うただそれだけなのだが、このスキルの面白いところはここからだ。


 まず、敵に向けて銃を撃つフリをすると実際に弾が発射される。とても奇妙な感覚だが、これはこれで面白いのだ。そして、その球は必ず何処かに命中する。手や足、太もも、心臓、頭、どこにあたるかは分からないが、必ずどこかに命中する。


 まずこの運要素が面白いのだが、それに加えてさらに発射される球の威力、属性すらもランダムであるから、敵に対して有効打になるかも怪しいのだ。


 そんなルーレットがとても楽しいのだ。


 ヘッドショットが決まって一発で倒れるもよし、手足を撃ち抜いて中々殺さずに最後の最後まで甚振って殺すもよし、なのだ。中には最後にくるぶしに当たって倒れた奴がいたのだが、地味すぎて面白かったな。


 そんなこんなで、俺は気分良く何も考えずにまるでシューティングゲームのような感覚で悪魔を撃ちまくっていた。そして、


「バン、バン、バン!」


 なんの気なしに目の前にいた悪魔に三発撃ちこんだ。しかしその悪魔は全く微動だにしていなかった。


 あれ、威力が弱かったか? そう思い、俺はもう一発撃とうとしたその時、


 ブゥン


 悪魔の姿が消えた。そして、


 ッダン!


 あろうことか俺に拳を向けてきた。俺はなんとか悠久之盾を差し込むことに成功し難を逃れたのだが、それにしてもなんだこの違和感は、さっきまでの悪魔に比べて強すぎる。


 距離をとってもう何発かラキバレを撃ち込んだのだがどうも手応えがない。さっきは確実に着弾していたのに、今回は着弾した手応えすらないのだ。おかしい、何かがおかしいぞ?








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運営編で主人公のスキルを軽く解説しております!もしよかったらお越しください!( ´∀`)

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