第1005話 試用


 ッドーン!


 俺は超特急で悪魔の城に到着した。時間歩行の扱いに慣れてなくでダイナミックな登場をしてしまったせいで、一瞬で悪魔たちに俺の存在がバレてしまった。


 でもまあ、そっちの方が個人的にはやりやすい。試したい技をたくさん試せるからな。


 ワラワラと悪魔たちが集まってきた。なんで天使も悪魔もこうやって群れるんだろうな、いや人間も群れるか。ってことは人間も天使も悪魔も変わらないんだな。天使にも悪魔みたいなやついたし。でも、天使みたいな悪魔って想像つかないなー。


 そんなことを考えていると、悪魔が俺に向かって殴りかかってきた。人が考えている最中に殴ってくるなんて、お仕置きが必要だな。


「【武神之構】」


 俺は早速、先ほど選定によって手に入れたスキルを発動した。これはその名の通り武を極めた神をこの身に降ろすスキルで、肉弾戦においては無類の強さを誇る。


 敵の攻撃を最小単位の動きでいなし、そのままカウンターを決める。動作において一切の無駄がなく、流れるように敵を処理していく。ここに集まっている悪魔の数は五十を超えるが易々と捌いていく。


 カウンターも常に致死の一撃で、ボーッとしてても勝手にやっつけてくれるのだ。まあ、ちゃんと意識を向けた方が強いから集中するけどな。心と体のズレっていうのは思いの外あるらしい。


 そんなこんなで悪魔の城、第一回戦の城門前での戦いが終わった。まだ城にも入っていないが、準備運動としては完璧ではなかっただろうか。


「ゾム!」


 ゾムを呼び出して大量に生まれてしまった悪魔の死体を食べさせて、直ぐに帰還させた。なぜそんなことをするかというと、心臓が勿体無いというただそれだけの理由だ。だからと言って、一つ一つ剥ぎ取るのも面倒臭い、ならばゾムに全部食わせてやろう、ということだ。


 ただ、戦いは俺だけでやりたいから帰ってももらったのだ。俺はまだまだ試したいことがたくさんあるからな。


 門をくぐると、そこには庭園のような空間があり一匹の巨大な悪魔がいた。庭園に悪魔を配置するとか、情緒があるのかないのか分からんな。さて、次は何を使おうかな……そうだ、


「【級水支配】!」


 このスキルを発動させると、俺は水を感じた。それは水操作みたいな近くにある水を動かせるとかいう次元じゃなく、空気中の水分や地中、人中などあらゆる水分を感じ、そして操作することができるというのが直感として認識できたのだ。


 俺は巨大な悪魔の前に対峙し、指一本触れることなくその体内の水分を膨張させたり収縮させたりして敵を攻撃した。考えてみてほしい、体を勝手に流れる水分や血液が第三者によってグチャグチャにされることを。


「グゥおおおおおおお」


 その巨大な悪魔は大層苦しみもがいた。だが、それでも痛みには並の人間よりも耐性があるみたいで、無理やり俺をめがけて突進してきた。


「【我霞故我ガカコガ】」


 俺は霞となり消えた。霞とは言ってしまえば水分であり、水分はどこにでもある。俺は空気に溶け、空気を伝って移動し、空気から現れる。そしてその空気中の水分は級水支配で完全に俺のコントロール下にある。


 もはや悪魔に勝ち目は無かった。


「グォおおおおおおおお」


 先ほどとは同じ咆哮だが、その意味は全くの別物だった。









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この主人公をリアルタイムに観測する運営さんたちを描きました!

級水支配とかの解説もしているので良かったらどうぞm(_ _)m


[414話]↓こちらからお読みになれます!

https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054896389186/episodes/16816927862296949204

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