第999話 神の明かり


 久しぶりの死を経験した後、俺は何度も何度も死を繰り返した。


「何度来ても無駄で


 敵の言葉などに聞く耳を持たず、まるでお腹を空かせた子供のように、目の前の死をひたすらに堪能した。


 そうして何度も死んでいく内に、俺が何故死んだのかを考えるようになった。


 そもそも俺は多くの無効スキルに加え、どんな攻撃でもHPが満タンであれば確実に食いしばりが発生してしまう体になっている。しかし、俺が今こうして死んでいるということは今回の敵の攻撃はそのどれも潜り抜けて俺に死を届けてきているということだ。


 俺は光魔法の連続攻撃という、一見シンプルで他のプレイヤーでも普通に使ってそうな技で死んだのだ。もし、今日この瞬間に天使に出会わずに、どこかで別のプレイヤーなんかに殺されたりしたら大変だったな。


 どこぞのプレイヤーに魔王殺しの称号を与えてしまうことだけはなんとしても避けたいところだ。なんせ、俺は決して魔王を殺すことはできないのだから。


 俺自身、自分が死のうとしない限りもう死なないと思っていたのだが、甘かったようだな。流石は天使だな。


 そんなことを考えながら死に続けていると遂に、懐かしい現象が発生した。


ーーースキル【光属性無効】を獲得しました。


「【光属性無効】と【日光無効】が統合されます」


ーーースキル【光無効】を獲得しました。


「【光無効】と【神聖無効】が統合されます」


ーーースキル【神明無効】を獲得しました。


 ん、ん、ん!? ちょっと待て懐かしいとか言ってたけどこれは全然懐かしくないぞ? なんだこの獲得と統合の連鎖は。


 一旦落ち着いて確認しよう、まず光属性を無効にしたってことは天使の攻撃がやはり光属性の魔法だったってことだな。そしてそれが日光無効と合わさって光が無効になって、それが神聖無効と合わさり神明無効ってことか。


 うん、まず光無効の時点で意味が分からない。光によるダメージを無効にするのか? そもそも光によるダメージってそれこそ日光とか光属性攻撃以外で何かあるのか?


 そしてこれはまあ百歩譲ったとして神明無効ってどういう意味だ? そもそも神明が意味不明だ。神の光が無効になるって一体どういう状態なのだろうか。スキル説明はなんて書いてあるんだ?


【神明無効】‥神明によるダメージを無効にする。


 おい、これを説明と言ったらもう何でもありじゃねーかよ。なんだよ神明によるダメージって。まず神明について教えて欲しいんだが。


 ん、あそっか神明を自分で調べればいいんだな。じゃあ、メガネくんに聞こっと。


『もしもしメガネくん? 神に明るいって書いて神明ってどういう意味?』


『え!? えーっと、神明とは基本的に神を指すことだと思われます。場合によっては天照大神のを指すこともあるようですが、このゲームに出てきたのなら恐らく前者ではないでしょうか? もしかして教会に関係することですか?』




『あ、いやちょっと入り用でな。サンキュ!』


 メガネくんってまじで頭良いんだな。こんないきなり聞かれて対応できるほどの知識をと持ってるのが凄い。今度、ネットで無茶苦茶難しい単語を調べてきて抜き打ちテストしてみようかな?


 まああとは単純に言葉の節々から溢れ出る有能さが感じられるよな。毎回、メガネくんと絡むたびに痛感させられる。しかもなんなら有能すぎて誤解させてしまったしな。


 確かにこのタイミングだったら教会関連だと思うよな。実際天使を倒しにきたのもその為だし。


 ……よし、俺は俺のやるべきことをしよう! というわけで天使さんに役目終了のお知らせをしに行こう。

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