第998話 智湧肉踊
俺は天使へと向き直り、敵の様子を観察した。やはり見れば見るほど先ほどの上級天使とは比べ物にならない強さをしていると確信できる。
その身に纏うオーラ、顔付き、筋肉量、そしてキャラデザの精巧さ、どれをとっても強者でなければ成し得ないものとなっているのだ。
あ、そういえばこの天使の階級はどのくらいのものなのだろうか。戦う上で是非とも知っておきたい情報だ。今回の侵略で天使を一掃できるならまだしも、全員と戦うのは骨が折れそうだからな。ある程度の実力を把握した上で準備を整えてまた挑みたい。
あ、でも階級を聞くには話しかけないといけないのか。今は魔王の格好をしているからどう足掻いても魔王口調じゃなきゃいけないよな……実は魔王口調未だに慣れてないんだよな。どこか気恥ずかしさもあるし。でも、やるしかないよなー。
俺は分割思考や思考を加速するスキルをフルに使って、全力で躊躇い、覚悟を決めて口を開いた。
「我は魔を統べる者である。貴様は何者であるか?」
俺は大きな声量と厳かな雰囲気を意識して相手に質問を投げかけた。すると、
「ほう、自ら名乗るだけの知能はあるようだな。その知能に免じて私も挨拶してやろう。私は智天使、レヴィエルだ。貴様の存在を消すものだ」
お、教えてくれたぞ。もしかしたら俺の唐突な自己紹介を無視して襲ってくるかもと思っていたからラッキーだな。因みに、もし襲い掛かってきた場合には、貴様には武道の心得は無いのかと煽るつもりだった。もちろん俺にその心得はないが。
さて、どう倒してくれたもんかな。
そんなことを上の空で考えていると、敵の周りに光が出現した。それはよく見るとそれは智天使の後ろで円状に浮いており、まるで後光のようだった。
そのあまりの神々しさに見惚れていると、なんとその光が眩い光を放ち、俺の方を目掛けて発射された。俺は光に耐性があるからなんとか目を瞑らずに済んだが、それでも避けるにはギリギリなスピー
「ホーミング!?」
ズダダダダダダダダン!
俺はその光の弾を全て被弾してしまった。そして、死んだ。
❇︎
「ふぅ……」
俺は魔王の自室でリスポーンしていた。
なんだか久しぶりに死んだ気がする。しかも意図せずに。これは従魔たちを召喚していなくて正解だったな。俺が死ぬのを従魔たちが見たら余計な心配をかけてしまうかもしれないからな。
だが俺自身はパブロフの犬のように餌付けされてしまったようだ。死という現象に。
死んだことに対してまさか自分がこんなにも興奮しているとは思わなかった。血湧き肉躍るとはまさにこのことかと、俺は体感している。死を強く感じれば感じるほど、自分が生きていることが鮮明になる。俺は今、生きているのだと実感できる。
あぁ、こんな感情を沸き起こらせてくれた智天使なんとかエルには感謝しないとだな。
よし、じゃあ早速第二ラウンドと行きますか! もう場所は覚えたしタイムアタックには自信があるからな。直線距離でガンガンいくぜ。
「【天翔軌道】!」
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