第997話 竜爆


 ドスン、バゴン、ズドン、ブオォオオオオ!


 俺はただ今、最高の状態だった。好きなように暴れ狂い火を吐いて迫り来る敵を蹂躙していた。


 これは無双ゲームが流行る理由も分かるし、格闘技にハマる理由も分かる。だって体を動かして敵を倒すってそれだけで快感なのだ。多分生物的に自分の方が強いと実感できることが良いんだろうな。


 それでも飽きはやってくる。だから俺は無双ゲームをプレイしながらも謎解きを並行して行っていた。すると、敵軍に紛れて常に一定の距離を取っている天使を見つけた。


 一見、ただこの戦いに参加しているようにしか思えないが、よくよく見てみると一向に接近してこないのだ。それだけでなく、何やら怪しげな動作、まるで何かを召喚しているような素振りさえ見せてくるのだ。


 これはもう確定だろ、と言うことで俺はひとしきり暴れた後、その敵を誅殺した。


「【断罪絶刀】」


 竜の姿でこのスキルを使うと、人間時よりも大きな刀となり、余裕で目標を排除することに成功した。すると、


 パリンッ、と窓が割れるような音がして多くの敵影が一瞬にして消え失せてしまった。うん、やはり俺が薙ぎ払っていた敵は今倒した敵が召喚した幻影だったのだろうな。でも幻影にしては殴り甲斐があったし分身って感じでもなかった。


 もしかしたら特別なスキルかもしれないから俺の分身に心臓を取りに行かせておこう。


 そしてまだ問題は解決していない。今さっき原因となるであろう天使を排除したことでかなり数は減ったがそれでも全体の四分の一程度しか減っていないのだ。


 つまり、他にもこの大量の軍を呼び出している輩が最低あと四人はいると言うことだ。早急に探して始末しなければならない。しかも相手は一人がやられたことでかなり警戒しているはずだ。


 それに元々敵の数も徐々に増えていたから、召喚者が一人減ったところですぐさまその穴を埋められそうだ。こうなったら一気に片付けてしまう他ないだろう。


 えーっと何のスキルを使おうかな、ちょっとスキルが多すぎて迷うな。また後で選定しなきゃダメだなこれは。とりあえず今は面倒くさいから、


「【マテリアルボム】」


 俺は自分を中心に爆弾を落とした。


 ッドーーーーーン!


 それは天使も楽園も全てを飲み込み爆発した。ご挨拶の時に使ったダークマターとは比べ物にならないほどの威力と範囲で、放った自分でもちょっと引いちゃうレベルだった。


 あ、そうか竜の状態で使ったからこれも威力が増しているのかもしれない。


 でもまあ十分に暴れさせて貰ったし問題ないだろう。それに、神のような全能感も味合わせて貰ったし、うん、文句はない! それじゃあもう俺はこれでお暇……


「おやおや、これは派手にやってくださいましたね」


 帰ろうとした俺の背中に声が掛けられた。それはここにくる前に戦った上級天使とはまた違った、より神聖で強者であるものの声だった。


 どうやら帰るのにも一苦労しそうだ。

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