第994話 触手は触手屋
「……」
上級天使を倒した後、俺たちの間に沈黙が漂っていた。堕天使たちがどう思っているかは知らないが、俺の場合は間違えて手を出してしまった手前、気まずかったのだ。
どうやって声をかけようかと思っていると、徐に堕天使たちが合体を解除し俺の前に跪いた。
『ご主人様、この度は私たちの不始末の後処理ありがとうございます』
『私たちは敵を討ち取った後、完全に慢心しておりました』
『ご主人様に私たちだけで倒すと宣言しておきながらこの失態、如何なる罰も受け入れる所存であります』
「へ?」
堕天使たちが何を言い出すかと思えば、跪いたままつらつらとそんなことを言い出した。俺としては逆に間違えて手を出してしまったのに、向こうは向こうで手を出させてしまったことに対して反省しているようだ。
『顔を上げろ。俺はそんなことでお前らを罰したりはしない。そもそもお前らが仮に倒せなかったとしたらそれは俺の育成不足なのだ。それよりも上級天使をよくあれだけ追い詰めた。それを誇るべきだろう』
『し、しかしそれすらもご主人様が私たちを強化してくださったおかげです』
『あの手助けがなければ私たちは追い詰めるどころか追い詰められていたでしょう』
『だから、仮にお前らが負けたとしても俺は責めることはない。負けた分だけ強くなれるからな。もし今日のことがこれ以上気に病むようだったら、これからどうやって強くなれるかを考えろ、いいな?』
『はっ、ありがたきお言葉、光栄の極みでございます』
そんなこんなでなんとか無事平穏に? 場を収束させることができた。俺も気まずさを誤魔化す為に負けた分だけ強くなるとかいうクサい言葉を言ってしまった。
コイツらは俺と違って純粋だからこれを信じてまた強くなるんだろうな。
あ、そんなことより、
『そういえば、俺がお前たちを強化した後に使った、あの物凄い勢いで上級天使を触手で刺しただろ? あれはどういう仕組みなんだ? 俺が使っていた時にはあんな特性作っていなかったと思うんだが』
俺が触手に対してつけた特性がそのまま引き継がれているのかどうかは知らないが、あれは確実に俺の知らないものだったからな。単純に気になる。
『はい、あれはご主人様から頂いだ触手というスキルにバネという特性を追加させていただきました』
『バネ!?』
なるほど、それで力を溜めて解放して突き刺す瞬間に鋼の特性を付与してたという訳か。確かにそれならあの光景にも納得がいくな。それにしても俺はそんな特性思いつきもしなかったな。もしかしたらもっと早くコイツらにあげるべきだったのかもしれない。
『ん、もしかしてお前たちはあのスキルをもらってバネという特性を思いついて付与したのか?』
『『『はい』』』
堕天使たちはなんでもないようにそう答えた。餅は餅屋ということか。うん、これは触手スキルをあげて正解だったな。
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