第995話 魔王の挨拶
俺たちは体勢を整え——ほとんど俺の気持ちの整理の時間だったが——、俺たちは楽上庭園へと進軍を開始した。
楽上庭園の名前は聞いたことがあったのだが、実際に訪れるのはこれが初めて、のはずだ。あれ、初めてだよな。前に来た時にこの門番を倒した記憶ないし……大丈夫だよな?
まあ前に来てたかどうかはどちらでも良いとして、楽上庭園はかなり厳戒な注意が必要になると思われる。悪魔の拠点である悪魔の城に初見で挑んだ時は、ハーゲンを失った。今回はそのような失態が無いよう、全力で攻略に乗り掛かるつもりだ。
しかも、注意しないといけないのは何も楽上庭園が天使の拠点だから、という理由だけではない。悪魔の城は四つの城があり、それぞれに親王と呼ばれる親玉がいる。でも、楽上庭園が悪魔の城のように幾つもあるとは考えにくい。
つまり、親王よりも強い存在がいる可能性があり、さらには親王クラスも最低四人くらいはいるんじゃ無いかと思われる。
あれ? 自分で言ってて思ったけどもしかしてこれ、結構ヤバい? 軽いノリで神様について学びに行こう! なんて思っていたけど、相当な苦戦を強いられるかもしれない。
いや、俺だって神様になるんだ。神様くらい拳で倒せるくらいにはならないとだよな。
「ここが楽上庭園……」
堕天使に案内されて入り口の前まで到着した。ここに立つと先程までとは比べ物にならないほどの空気の圧を感じる。圧無効を持っている俺が感じるこの圧が天使の持つ清らかさであったり、神聖さであったりするんだろうな。
「お前たち、ここまでありがとう。ここからもお前らと一緒に行っても良いと思っていたんだが、ここから先は俺一人で行かせてくれ」
俺が彼らにそういうと大層驚いた表情をしていた。だが、止めるような真似はしなかった。ちゃんと俺の気持ちを分かってくれているのだろう。
「ここまで本当によくやった。お前たちは強くなっていたしこれからも強くなれる。魔王軍の一員としてこれからも更に鍛錬に励めよ」
『『『はい!』』』
そう言って俺は堕天使ズを送り出した。
最初は魔王軍全員で乗り込もうかと思ったが、最近従魔にしろ俺の部下になってくれたプレイヤーにしろ少し甘え過ぎていた部分が多々あったように思える。
ここいらで自分の限界を知り、そして全力を出すことで改めて上司としての、王としての資質というものが身につくと思う。
現実世界ではうだつの上がらない、ぎりぎりの人間だがこの世界では俺は魔王なのだ。天使くらい俺がこの手で倒しても文句は言われないだろう。
あ、折角だから初手はあれで行こう。こういう場所だとより映えると思うしな。
「【暗黒魔法】、ダークマター」
ッダーーーーーーーーン!
俺は門に思い切り暗黒物質をぶつけてやった。始まりの挨拶はこんなもんでいいかな? さあ、かかってこいよ天使ども。
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