第986話 メガネと嫉妬


 俺がゲームにログインすると目の前には立派な教会が建っていた。そうそう俺は正にこんな教会を作りたかったんだよ、って


「はぁ?」


 え、なんでここに教会が建ってるんだ? だってこのログインした場所は俺が最後にログアウトした場所のはずだからここに教会があるのはおかしいだろう? 何が起きたんだ?


 周りを見渡してみると、俺の従魔が控えていた。呼び出してもいないのに既にもういるのはバグか? あ、いやそんなことはないか、そうじゃなきゃ俺がログアウトしてる時の城の防衛とか無理になっちゃうもんな。


 なら、従魔たちが自分達で作った? まさか、みんなそんなに賢くなったのか?


「あ、メガネ!?」


 俺の従魔って凄いんだなーと結論づけそうになった時、アシュラの影から一人のメガネが現れた。まあ、俺が知っているメガネは一人しかいないんだが。


「え、メガネってなんですかメガネって! もうただの一般名詞じゃないですか! って、そんなことよりどうですかこの教会! 陛下が教会をお造りになろうとしていると言うことを配下の方々にお聞きしまして、微力ながらお力添えをさせていただいたのです!」


 おいおい、本人がそんなことよりって言っていいのか? 本人くらいは名前にこだわり持てよ。まあ、かくいう俺も名前にこだわりはないタイプなんだがな。名前は判別できれば良いよねタイプだ。


 あと、やっぱりメガネくんは頭が物凄く良いんだな。一般名詞じゃないですかっていうツッコミも、そしてそのツッコミから自然な流れで敬語へと移行する様も、あとシンプルに教会を建てる能力と、ハイスペック過ぎるだろ。


 そもそもなんで教会を建てられるんだ? そんな技術やノウハウ一般人が持ち合わせているわけないだろ?


「もしかして親が大工だったりする?」


 俺としても思わず素で聞いてしまった。この際、魔王の威厳もへったくれもない。


「へ? あ、いえ、恥ずかしながら配下の方からお話をいただいた時、調べさせていただきました。それで、まあなんとか……」


 いやいやあんたの上司はどれだけ調べても教会は建てられなかったし、なんならニュースになってたよ、うん。やはり持つべきはできる部下なのだな。


「あっ、デザインの方は宜しかったですか? 個人的に持ち合わせている教会のイメージと完全な好みで作らせてもらったんですが」


 そう言われて改めて教会を見てみると、デザインは外観内装を含め完璧だった。もうここまでくるとこのメガネくんの職業が気になってきた。俺なんかが上司であってはいけない気がしてきたぞ?


 なんとなく見た目と声の感じから未成年の学生なのかななんて思ってたんだが、もしかしたらゴリゴリの社会人で俺なんかよりもよっぽど社会に貢献している可能性があるぞ?


 ……ま、まあそれでも俺は魔王面をやめないけどな。だって、こんなに優秀だったら現実世界じゃどうせ俺がペコペコしないといけないんだろ? それだったらここでしないと損だろ、うん。


 え、なんか一周回ってなんかムカムカしてきたな、メチャクチャ無茶なお使いとか頼みたくなってきたぞ。


「あ、陛下。教会もそうなのですが、私がここにきたのには別の理由がありまして、あることを伝えにきたのです」


 え、もしかして俺のメインクエストだった教会建設はメガネくんのサブクエだったのか!? こりゃもうちょっと敵わないな、時給あげないと。


「それで、どうしたんだ?」


「はい、それがなんと、七大罪スキルの一つ【嫉妬】を獲得したプレイヤーが現れたのです」


「はぁ!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る