第985話 盛大なスライム
「はぁ!?」
俺はこの日、ネットでゲームの情報を漁っていた。最初は教会を建てる為に必要な情報が何か無いか探していたんだが、教会なんてそこら中にあるのに建てようとするようなアホはいないらしく有意な情報見つけられなかった。
そしてその流れのまま波に任せてサーフィンを行なっていると一つの動画に辿り着いたのだ。
「ん、突如として現れた巨大な城について?」
なんだこりゃと思いながらも、もしかしたら俺にも関係あることなのかもしれないと思い、動画を再生した。すると見覚えしかないお城の前に一人のプレイヤーが立ってこちらを見ていた。
『えー、ただ今緊急で動画を回しているのですが、NSO日本サーバーの中に突如として大きなお城が出現しました。これに関して運営に問い合わせたところ特に回答は得られませんでした。ということはこれは運営が意図するものではないということでしょうか?』
おいおい、なんで俺が昨日建てた城がこんな風に取り上げられてるんだよ。そんな大ごとじゃないだろ絶対に。それに、他にも持ってる人いないのか? 一人くらい持ってる人がいてもいいだろ、一夜城。
でもまだまだ動画は続いていた。
『このお城は見た目は大層立派で、天守閣もあるのですが、その中には誰一人として入ることができないという奇妙な建物となっております。いや、何かを守る、という意味ではバッチリ仕事をしていると言えますが、この城が何を守っているのか、大きな注目が集まっています』
まさか、ここまで大ごとになるとはな。もうちょっと後先考えて一夜城を建てれば良かったぜ。あの時はあまりにも爺さんへの怒りが高まっていたから仕方ないっちゃ仕方ないと言えるのだが。
『そんな城の周りには見てください、これだけの人だかりができています!』
「はぁ!?」
今、ここである。ん、遅くないかって? いやこれがリアルの反応だろ、うん。結構な人数だ。
『この人たちは城に何かが隠されている、守られていると考えてそれを手に入れようと頑張っているプレイヤーでございます。今も必死に、全力で城を打ち破らんと攻撃を続けております。私としても非常に参加したいのですが、この動画を撮ることでより多くの人に参加してもらえたらと思っております』
いやいや、そこには何もねーよ。何をしているんだこの人たちは。あ、そういえば何もなくはないのか、スライムがお城の礎になってるんだっけか? じゃあそれが出てくるのか、時間が来たら。
『それにしても耐久力がどれくらいあるのかも分からないまま攻撃し続けるのは本当に大変だと思われます。あっ、おーっとついに、ついに城が突如として消えました! これはここに集まってくれたプレイヤーのおかげでしょう! さて、一体ここには何があるのでしょうか!?』
い、いやだから何もないぞ? 言ったからな、俺は何も無いって。
『……す、スライム!? なんとあの巨大な城からスライムが出てきましたこれはどれほど価値のあるスライムなのでしょうか!? 誰が討伐するのか先ほどまで協力関係にあったプレイヤーが一瞬にして敵へと変貌しました! 昨日の友は明日の敵! まさに地獄! 血みどろの戦いが幕をあけました!』
……なんか、色々申し訳なくなってきたな。今更謝るわけにもいかないし、ごめんな。
俺はそのまま動画を見るのが居た堪れなくなったが、俺にできる唯一の供養としてその勝者が何も持っていないスライムを倒す瞬間を見届けた。
本人はとても満足そうにしていたのだから良かったのだろう、きっと、うん。そうに違いない。
俺は何も考えずにゲームへとログインした。
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