第984話 爺さんの悪意


 一夜城!? それは買うしかないじゃねーか! ナイスだぜ爺さん。爺さんも俺との付き合いが長くなって俺が何を欲しがっているか分かるようになってきてるんだろうな。


「爺さん、買います! いくらですか?」


「これは結構高いんじゃが、お主と儂との仲じゃ。五千で手を打とう」


「五千!?」


 え、そんなに高いのかこのスキル。いくらなんでも友情価格で五千万は相当イカれてないか? でも、まあそれだけの価値があるスキルってことだろう? それなら買うしかないよな。


 それにお金に関しては今は別に困っていない。今までは死ぬたびに失ってきたが今ではことあるごとにしっかりと預けているのだ。これで俺の金は貯まる一方というわけだな。そしてそんな俺にとって五千万という金額は端金とまではいかないが手の届く範囲なのだ。


「分かりました。ではお金を下ろしてくるのでキープしておいてくださいね。では」


 俺はそう言って店を出てお金をとりに行き、すぐ様戻ってきてスキルを購入した。


「毎度あり、じゃ」


 ❇︎


 お店を後にした俺は早速スキルの内容を確かめることにした。値段も値段ださぞかし素晴らしい効果なのだろう。


【一夜城】‥任意の対象を礎に城を建てる。この城は一晩で消えてしまうがその間、礎となった対象はその場を動くことができなくなる。熟練度に応じて外見の見栄えが良くなる。


 ん? ちょっと待ってくれ、なんかこれ違くないか?


 一夜城の一夜ってその一晩ってこと? 一晩経ったら消えますよーってことですか?


 ちょっと思ってたのと違うんですけど……それに、値段ほどにも強くないような気もするんですが……


 これってクーリングオフ対象商品でしたっけ?


 いや、確かに、確かに敵を一晩無条件に拘束できるっていうのは強みかもしれないが、五千万もするほどか? 絶対にそんなにしないだろ。


 俺、もしかしてここにきてあのジジイにボッタクられたってことか? クソ、完全に油断した、まさか俺を騙してくるとはな。ちゃんとした狸親父、いや狸ジジイじゃねーか。


 はぁあー俺としたことがここで焦ってしまったな。まさか買う前にスキル効果を確認しないなんてヘマをするとはー。


「くっそ!」


 どうせスキルショップに引き返したところで返金は受け付けてないとかいうんだろうな。


 ま、まあ俺もツケとか言ってわがまま聞いてくれたからそれと思えば、、、


 いやそれでも高いだろ。


 今度絶対にあの爺さんから格安でスキルを手に入れてやる。


「【一夜城】!」


 俺はその辺にいたスライムに向かってスキルを放ち、小さな生命の行動を制限した。うん、これは完全なる八つ当たりだが許してほしい、命は奪っていないのだから。


 はぁ、って俺なんで一夜城を買ったんだっけ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る