第983話 家づくり
よし、とりあえず原木の確保には成功したな。次はコイツらを使える木材に加工していかなければならない。
恐らくこのゲームには加工専用のスキルなどあるんだろうが、生憎そんな都合良く持ち合わせてはいない。
だから手探りで行おうと思う。まずは、丸い原木に対して、四角い木材を得る為に縁を切り取る。
「【断罪絶刀】!」
うん、切れ味は抜群だな。流石は魔王の刀だ。生物だけでなく木まで切れるとは万能な刀だな。
『おい、お前らも今俺がやったみたいに木の縁を切ってくれー』
俺がそう呼びかけると、スカルとボーンは転双を使って器用に、アシュラはアシュラビートで豪快に、アスカトルは配下を使って効率的に、堕天使たちは一生懸命原木を木材に変えてくれた。
その甲斐あってか、あんなに大量にあった原木がものの一時間で全て木材にすることができた。やはり数は偉大だな。俺がどれだけ頑張ってもこれだけの効率は得られないだろう。
そして俺は全ての原木を切り終わった後にあることに気がついた。それは、設計図の必要性だ。
俺は今までのクラフト系ゲームの延長戦でなんとなく作れると思っていたのだが、ここは限りなくリアルに近いのだ。クラフト系ゲームなら原木から木材にするのは一瞬だが、この世界ではおそらくちゃんとした製材にまで加工しなければならないはずだ。
こうなってくるとリアルで建築を齧ってもいない限り手も足も出ない。そうと分かった以上、せめて設計図だけでも書いてくれる設計士、欲を言えば大工の存在が欲しい。
だが、神官というプレイヤーをさっきこちら側に迎え入れてしまった以上、さらにプレイヤーを増やすという選択肢は取りたくない。従って必然的にNPCの大工を探さなければならないのだが、そんなやついるのだろうか。いたとしてもすぐ見つかるのだろうか?
そもそもどこにいけば会えるのかも分からない。暗殺ギルドのように大工ギルドのようなものがあるのだろうか?
んー、大工といえば爺さんだよな、爺さんと言えばスキルの爺さんだよな? よし、スキルの爺さんの所に行ってみよう!
久しぶりに行けば良いスキルもあるかもしれないし、爺さんなら知り合いに大工がいてもおかしくないだろう。
よし、行こう。
❇︎
「お邪魔しまーす」
もうここには来慣れたな。もはやこのゲームの世界において第二の故郷とも言えるくらいの安心感がある。
「お、久しぶりじゃの。今日は何のスキルが欲しいんじゃ?」
「いや、今日は別に……って、ん!?」
なんだこのスキル、木材加工……!?
これがあれば木材を自由自在に加工できるってことか? だとしたら大工に合わなくてもいいんじゃないか?
……いや、落ち着け騙されるな。このスキルがあっても加工できるだけだ建築スキルもなければ設計スキルもない、大人しく大工について話を聞いてみよう。
「あのー、爺さん大工について知らないか?」
「ふむ、大工じゃと? お主もしかして家でも作るつもりなのか? そんなお主にはほれ、一夜城というスキルがおすすめじゃよ」
「い、一夜城!?」
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