第981話 初めての劣勢


「は、貴方を信仰する??」


 神官さんは相当驚いた顔で、そして何言ってんだコイツ、みたいな目でそう言った。


 いや、確かにいきなりこんなこと言われたら誰でも困惑するか。俺だってもし仮にそんな奴が現実世界にいたら確実に無視するしな。


「すみません、説明を省き過ぎましたね。もうお気づきかもしれませんが、私は魔王なのです」


「えぇっ! 魔王!?」


「え?」


 あれ、もしかしてこれは気がついていないパターンだったのか? いやいやいやさっきの反応は確実に気づいていない奴の反応だっただろ!


「「……」」


 これは早とちりし過ぎたか? だがもう後戻りはできない。このまま突っ走るしか無いようだ。


「あ、そうなんですよ。だから私を神として……


「え、ちょっと待って下さい。ってことはあの強い魔王がプレイヤーだったってことですか!?」


「え、あ、はい……」


「えーー!! あの無理ゲー積みゲーと言われた魔王がプレイヤー? ん、ってことは運営からなんらかの支援があったってことですか?」


「いや、別に特には……」


「えーー!!! なんの支援も受けずにあれだけの強さを手に入れたんですか??」


「は、はい……」


「じゃ、じゃあ僕も仲間に


「一旦黙れ」


「はっ、はい」


 ちょっと五月蠅かったからオーラを少し出して黙らせた。話が通じない相手は苦手なのだ。今みたいに悪気がなくても発動してしまってる場合もあるから、こういう時は強制的に黙らせたほうが早い。


 それに仮に魔王軍に加入させるのならばいつまでも俺が下手に出ていてはいけないからな。タイミング的にも俺がになるちょうど良い瞬間だった。


「お前は神官なのだろう? であるならば我を崇めよ。そして民衆に我が存在を布教するのだ。さすれば我が貴様に力を与えん」


 ん、ちょっと魔王口調やりすぎか? 一定期間使っていないとすぐに抜けるしまた使う時は記憶で再現するからなかなか定着しないんだよな。しかもその間に王様やら爺さんやらと会うとごちゃごちゃしちゃうし。


 ま、雰囲気で行けば大丈夫か。


「か、かしこまりました」


「それと、我及び貴様に起こった出来事について他言は禁ずる。もし情報漏洩が発覚した場合は……貴様の身に自由はないと思え」


「は、はい……」


「では、手始めに魔王国へと招待する。まずは魔王国にいる者どもに布教するのだ、分かったな」


「かしこまりました。あのー魔王様、教義はいかが致しましょう?」


「教義?」


「はい。いわば宣伝文句みたいなものです。仮に魔王教としますが、魔王教に入る理由や目的と考えても良いかもしれません」


「そうだな。力、これで良いだろう。強くなければ真の自由はない、我の元に来れば強くなることができる。こういうのは単純明快の方がいいだろう?」


「は、はぁそうですね」


「ではくれぐれも、よろしく頼む」


 話がまとまり俺たちは魔王国へと舵を切った。


「エクストラクエスト『神への挑戦』が開始されました」


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