第980話 共犯者の末路


「貴方は一体何者なんですか?」


 ハーゲンの上で二人きり、夕陽が地上を照らす中俺たちは沈黙に包まれた。


 その目は俺の正体についてほとんど見当はついていると物語っており、もはや言い逃れできない雰囲気だった。むしろほぼ分かっているのに何者か、と聞くあたり良い人なのかもしれない。


 そうだよなー、今振り返ってみると怪しさしかないもんな。初心者の格好で称号を消して欲しいっていうところからおかしいし、祭壇に弾かれたのもそれに耐えて無理やり強行したのも何もかも普通じゃなさすぎた。ここは正直にいう他ないだろう。


 でも、なんて言えばいんだろう。俺のこと魔王って知ってそうな人に俺が魔王です、っていうの恥ずかしくないか?


 い、いや気にしたら負けなのだろうが、それでも相手が人間と分かっているこの状況では少し、いやかなり恥ずかしいぞ? ここは……そうだ必殺話題逸らし!


「そう言えば、共犯者を獲得してしまいましたよね。その節は本当に申し訳ありません。そのー、私が聞くのも変な話ですがこれからどうしていくおつもりですか?」


 こちらが先に謝ることで相手に引け目を感じさせ、その上でこれからの方針について訪ねることで完全に意識を逸らすという戦法だ。これはかなりの効果なのではなかろうか?


「そ、そうですねー。私は今までずーっと神官プレイで行ってきたので、急にこれから神官にはなれません、と言われてもどうすれば良いのか……それこそ誰かに面倒を見て貰えないか、なんて思っちゃいますよね」


 と言ってこっちを見てきた。ほほう、つまり俺に面倒を見ろと? でも、今までずっと神官だったんだろ? その神官生命を絶ってしまったのは本当に申し訳ないのだが、俺の魔王軍に役立つかと言われると……


 ん、神官、魔王? 、、、これは!


「あ、あのー、神官ってどのようなことができるのですか? それにどの様に強くなっていくのでしょうか?」


「神官、ですか? 神様に祈りを捧げて……ってそうじゃないか、戦闘面でいうと回復行った結界を張ったり、攻撃でいうと聖属性で攻撃したりすることができます。どのように強くなるか、でいうと神への信仰心や布教の貢献度で、役職が上位のものへと進化していきます」


「なるほど……」


 個人的には神様に祈りを捧げて、の後が非常に気になるのだが、でも気になることは大体知ることができた。後はシステム的に行けるかどうかだが。


「神様って、この世界どのくらいいるんでしょうね?」


「へ?」


「あ、いや神官さんが信仰していた神様の他にどのくらい神様がいるんだろうな、って。ほらファンタジー小説とかだと色んな神様が出てくるじゃないですか。この世界の宗教観ってどうなってるんだろうなーって」


「は、はぁ。でも確か国や地域で様々な神様がいる、みたいな話はどこかで聞いたような。それこそ大陸によっては全然違う神様とかもいそうですしね」


「へぇー。なら別に一人くらい増えても大丈夫ですよね?」


「え?」


「もしこれからのことについて迷っているのなら、私を信仰してみるのはいかがでしょう?」

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