第979話 叛き逆らい共に犯す者
《叛逆者》‥神に叛く。神からの恩恵を受けられなくなる代わりに神に攻撃可能になる。
お、おう。なんとも不穏な称号だな。神に攻撃できるって最早どんな概念だよ、って感じだ。でもこれで加害者の称号を消すことができたんだからプラマイ……ギリプラスか?
お礼を言ってこの場を立ち去ろうとすると、俺の称号消去を手伝ってくれた神官さんが俺の顔をものすごい形相で見つめていた。睨んでいた訳ではないのだが、怒り、戸惑い、恐れ、といった色んな感情が混ざり合っているような顔だ。
「ど、どうかされました?」
「あ、いえ……もしかして何か称号を獲得されました?」
「え、なんで?」
なんでバレてるの? 神官様には俺の称号が全部見えているのか? ってか儀式の過程で称号だけじゃなくて全てのステータスを見られている可能性すらあるんじゃないか?
「やはりそうでしたか、私も今しがた共犯者という称号を獲得してしまったのです」
「共、犯者……?」
俺がその言葉を理解する前に、
バンッ!
「おい、アイツらが神様への反逆者だ! 捕まえろ!」
奥から数人の神官が現れて俺らを捕まえようとした。叛逆者になってしまった俺らにはここにいる資格はないのだろう。いや、ここにいるどころか向こうからしたらのうのうと暮らすことすら許されないのだろうな。
「に、逃げましょう! こちらへ」
俺は共犯者という言葉の意味をやっと理解し神官様の手を取った。もし俺のせいでこの神官様の立場が危うくなるなんてことはあってはならない。いや、立場はもうないのか。ならばせめてその身に危険が及ばないようにしないといけない。
祭壇の奥から出てきた追手から逃げるように来た道を引き返し正面の扉から出た。しかしそこにはもう既に衛兵がたくさん構えており、逃げ道は完全に防がれていた。ただ一つのルートを残して。
「ハーゲン!」
『あいっす!』
俺はハーゲンを頭上に呼び出し、神官さんの手を握ったままハーゲンの足へと捕まった。そして呆気に取られて何も出来ない衛兵たちを見下ろし、天高く舞い上がった。
「えっ、ちょっ、うわぁあああああああああ」
神官さんは高いところが怖いようだがこれも逃げるためだ許してほしい。少しの辛抱だ。
「【纏衣無縫・改】、ふぅ……」
俺は二人とハーゲンの姿を隠し、神官さんと俺がハーゲンの体の上に乗ってようやく一息つくことができた。あっという間の出来事過ぎて何がなんだか、と言った感じだ。
そんな俺よりも何が起きているか現状を分かってなさそうな神官さんは文字通り目を回していた。一通り呼吸が落ち着くまで待って俺は神官さんに声をかけた。
「あのー、大丈夫ですか?」
神官さんはなんとか対話は可能なレベルにまでは到達していたようで、
「あっ、はい大丈夫です……」
「……」
気まずいな。ただの初対面がいきなり天高い上空で二人きりになったらそりゃ話も弾まない。むしろ弾む方がおかしいだろう。だが、俺には聞かなければならないことがある。俺は意を決して共犯者について尋ねてみた。
❇︎
話によると共犯者の称号は叛逆者と同じ効果だった。神から見放される代わりに攻撃が可能になる。それがどれほどの効果を持つか分からない以上、下手に楽観も悲観も出来ない。
そしてその他にも称号を消す儀式が今までと明らかに違ったこと、電撃とも言える衝撃を平気な顔をして耐えていたこと、極め付けにはこの鳥型の従魔の存在から逆に今度はこちらが疑問をぶつけられた。
「貴方は一体何者なんですか?」
と、半ば確信しているような目で質問されてしまった。
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