第976話 神の力
別視点です。
——————————————————
「……神の御心の前に、大いなる感謝を込めて」
ふぅ、これで朝一の祈祷が終了だ。全く神官の朝は早い。起きたら直ぐにこの祈祷をしてそのまま直ぐに教会の清掃に移る。それが終わったら孤児院や宿無しさんたちの為の炊き出しと休む暇なんてありゃしない。
ん、じゃあなんでわざわざ人気もない地味な神官ムーブをしているのか、って?
そりゃ、神官っていうのは最初は今みたいにしんどい事が多いけどそれを乗り越えた先には圧倒的な権力と金が手に入るだろう? 俺はそれを求めているのだ。
正直俺は宗教なんて迷える子羊を導いて金を踏んだくるものとしか思っていない。(※個人の感想です)
ならばそれを利用しない手はないだろう?
「おい新入り、手が止まっているぞ。そんなことでは神への感謝の気持ちが伝わらないぞ!」
だから掃除中にこんな理不尽な叱責を受けても俺はへこたれない。そもそも感謝の気持ちが伝わらないってなんだ? 神へ感謝していることが大前提っていう考えが気持ち悪いな。
そんなこんなで清掃に続き炊き出しも終わるとしばしの休憩時間が与えられる。まあ、この休憩時間というのも名ばかりで俺のような下っ端神官は神の聖典を勉強しておかなければならない。そうじゃなきゃ午後の座学の時間で無限に小言を言われてしまう。
粗末な飯を流し込むようにかっこみ、早速勉強を始めようとした時、一人の来客が訪れた。
「ごめんくださーい」
俺は聖堂で静かに勉強をしようと思っていたのだが、それが仇となってしまった。この時間に来客が来ることなんて滅多にないのだが、来客が来た場合にはいくら下っ端とはいえ対応をしなければならない。
俺の貴重な勉強時間がーなんて思いながら対応しようと来訪者の元へ歩み寄ると、
「ぷ、プレイヤー?」
なんと珍しいプレイヤーだったのだ。いや、別に無茶苦茶珍しいというわけではないが、基本的にはお腹が空いたNPCや、お金が欲しいNPCが基本だ。そもそもプレイヤーは神殿を含む教会にはほとんど用がないはずだ。それこそ……
「あっ、あなたもプレイヤーさんですか? ちょっと消したい称号がありまして、こちらで消せると伺ったもので、、、」
そう、それこそこのように都合が悪い称号を消すかPKを行った過去を消すとかよっぽどな場合に限られてくる。この人はレッドプレイヤーではなかったからやはり称号だったか。
まあ、これに関しては俺は初めてではない。むしろ何度もやっているので体が覚えているレベルだ。
「了解しました。消したい称号は幾つございますか? 一つにつき10000ゴールドかかりますが大丈夫でしょうか?」
これは毎回思うんだが、たかが一つの称号を消してあげるだけで一万円も取るって良い商売してるよなって感じだ。こういうところも気に食わないところの一つだよな、優しい顔してしっかり金はとるもんなー。
「分かりました、では一つお願いします」
お、そんなに驚かないんだな。初心者の見た目してるからこの値段にビビるかと思ってたんだが、ちゃんと調べてきたのかな?
「では、祭壇の方へと移動しますね、こちらへどうぞ」
称号を消すのは祭壇の上で行う。実際に、プレイヤー自身が供物となることで悪い称号を神の力によって消してもらうのだ。こんなことを現実でもやってたら流石に引くがここはゲームだからな、ちゃんと効果があるだけマシだろう。
「ここに寝転んでください、」
バチッ!
お金を受け取りいざ称号を消そうとそのプレイヤーを祭壇に横たわれせようとしたその時、あり得ないことが起きた。
「「え?」」
そのプレイヤーを祭壇が拒否するかのように、衝撃が走ったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます