第975話 虚無時間


「え、何これ」


 俺は今、俗に言うエゴサというものを行なっていた。称号を消す手立てが何か知らないかと調べているうちに気がついたら魔王スレなるものにたどり着いてしまったのだ。


 一応魔王本人としては確かめないわけにもいかず、どんどんと読み進めていくと衝撃な文言が所狭しと並べられていた。


 魔王とかいう無理ゲー、魔王じゃなくてただの鬼畜、とかならまだ可愛い方で、悪魔王だろこれ、とか、考えた奴出て来い野晒しにしてやるとか、これはただの詰みゲー、その強さもはや罪レベルなんてヘンテコな文章まであった。


 まあ、これらの文章はあくまでネタ要素も含んでいるのだろうが、冷静に意義を唱えている人もいた。というかこちらの方が問題と言えるだろう。魔王本体だけでも強いのに取り巻きにすら歯が立たないってどういう状況? だとか、運営さんはクリアさせる気あるのでしょうか? とか、こちらも無限にある。


 運営にヘイトが向いているのはなんだか申し訳ないが、別に狙ってやったわけじゃないし許して欲しい。


 そんなことよりもまさかここまで嫌われているとはなー。酷いやつだと単純なる罵詈雑言が並べられているだけのとこもあって、シンプルになんか嫌だな。


 別にプレイヤーみんなと仲良くしたいなんてお花畑思考は持ち合わせていないが、俺の知らないところでこんな言われようをされるのは気に食わない。だって、魔王強いけど顔はブスじゃね? ってコメントもあった。


 俺の顔をいつ見たっていうんだ? って話だ。


 でももう魔王として人前に出る時は絶対にフルプレートアーマーを被って脱がないからな。


 俺がNPCだと思って好き勝手言いやがって。まあ、俺が気にしなければいいだけだが、もしメンタル豆腐だったらどうしてたんだ? 魔王辞めてるぞ?


 他にも俺への悪口だけじゃなくて俺の配下達の情報なんかも纏められていた。まあ、纏められてるって言ってもプレイヤー側から見たモンス達だから全然足りてないけどな。


 それでも見た目と属性くらいは綺麗に書かれてるから意外とちゃんとしてる。うちのメガネくんみたいな有能くんがプレイヤー側にもいるのだろうな。


 適当にこちらの手札気にせずバンバン切ってたら、気づけば完全に対策を取られてる、みたいなことになりかねない。


 皆んなの強化も大事だが使う技を絞って敵に情報を渡さないことも大切なんだな。


 エゴサなんて初めてしたが、思いの外収穫はあったようだ。それに俺はなんと言われようと絶対にプレイヤーには負けない、そんな強い意志が芽生えた。これは恐らく良いことだろう。


「ふぅ……」


 それにしてもエゴサってこんなに体力使うんだな。そこら辺のモンスター倒すよりよっぽど大変だな。


 投稿してる人たちはスライムを狩るよりも楽な気持ちでやってるんだろうが、こちとら悪魔一体分くらいの疲労度はあるぞ?


 俺でこのくらいなんだからそりゃ芸能人も大変なんだろうな。芸能人は伝説のドラゴンを倒すくらいだろか?


 したことはないけど自分がされると誰かを叩くのはやめよえと思えるよな。


 よし、じゃあ今からログイン……なんか忘れてるような?


「あ」


 そうだ、俺は称号を消す方法について調べようとしてたんだった。何掲示板だけ見て満足しているのだろうか。


 その後軽く調べると保持したくない称号は神殿に行けば簡単に消せるということが直ぐに分かった。


 ……俺はこの時間一体何をしていたんだろうか?









—————————————————————————

私自身この虚無時間を減らさねばと思っているのですが…


皆さんも気づいたら時間が溶けてること、ありますよね??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る