第977話 お告げ
あ、あれ? なんだ、バグか?
祭壇に捧げようとした瞬間に静電気のような、それにしてはあまりにも大きな衝撃が走った。今まで何人かの称号を消したことがあるのだがこんなことは初めてだ。運営が何かイジったのだろうか?
でも、新しく実装された職業だとかイベントとかだったらまだしも、昔からあるこのシステムに今更バグが起きたり、運営がイジったりするか? そうは考えにくい。
ならば問題があるのは俺、もしくはこのプレイヤー、ということになる。俺に今までと変わったことなどあるはずもなく考えられるのはもはや一択しかない。この間の思考およそ二秒。
「「……」」
改めてよく見てみると装備は初心者装備だというのに、感じられるオーラは只者ではない。一体この人は何者なんだ? 今すぐ聞いてみたいという衝動に駆られるが俺の第六感、いや神のお告げがそれをするなと言っている。
俺はこの地獄の空気に耐えることができず最悪の手を取ってしまう。
「あ、あれー? おっかしいですね、もう一度やってみましょう」
何を思ったのか、何も見なかったことにしてもう一度挑戦しようとしたのだ。そうすれば結果は変わると思い込んで。だが、そんなはずはなかった。
バチィッ!!
先ほどよりも明確にそして強烈に祭壇がこのプレイヤーを拒否した。これは誰がどう見ても失敗であるし、これ以上どうすることもできないものだと分かる状態だった。
はぁ、同じことを繰り返して違う結果を期待することを狂気と呼ぶって誰かが言ってたな。俺は狂ってたのか。
そう思い、依頼者の方を向き直ると、自分の手をじーっと見つめていた。そして、
「もう一度お願いできますか?」
「は?」
俺は自分の耳を疑った。もう一度したいだって? さっきの俺は狂ってたからもう一度しようと提案したんだぞ? それに今のは流石にヤバいって分かるだろ、それなのにもう一度しようと頭いってらっしゃるんですか?
「あ、いえそうですよね。でも、自分は大丈夫なので、我慢できますので気にせず称号の消去の方を行なっていただけないでしょうか?」
「は、はぁ……」
俺が狂っているというのならばこの人は何なのだろう、壊れている? 初対面の人に失礼ながら俺はそう思わざるにはいられなかった。
ただならぬ雰囲気にあたおかな発言、俺はもう思考を放棄していた。今すぐにでもこれが終わらないかと、俺はそのことだけを考えていた。だから、俺はそのプレイヤーに言われるがまま再び儀式を始めようとした。
バチッ、バチバチバチバチッ!
祭壇はもはや拒絶というより悲鳴を上げていた。何なら拷問器具のようにすらなっていたのだがそれでも俺は淡々と進めていった。その間祭壇に横たわっているプレイヤーは表情ひとつ変えていなかった。この人は一体何なんだ? 一体どれだけの業があればこれだけ神から嫌われるというのだ?
込み上げてくる疑問をなんとか押し殺し儀式を進めた。
「消去したい称号を選んでください」
プレイヤーの操作が終わったのを確認し、俺は祈りを捧げ儀式を終了させた。そして、その瞬間、
ーーー称号《共犯者》を獲得しました。
悪魔からのお告げが聞こえた。
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