第969話 女優魂

引き続きいちごちゃんです。

——————————————————


 コイツは、この人は私を第三回イベントで倒し、強くなりたい私を無碍に扱った挙句、頂上決定戦でお姉さまを倒したプレイヤーですわ!


 そ、そんな人が何故、こんなところに? しかもモンスターまで連れて。それに、このモンスターどこかで見たことがあるような、そんな気もしますわ。


 一体あの人は何者なんですの?


「か、海神様! この場所では透明になることはできないんですの?」


『無理だ。ここは水中エリアではないからな。そもそも、先ほど貴様が水を全て消してしまったせいで我も余計な力を使っておるのだ、都合よく我を頼るでない。それに、貴様が自分で手を下すと息巻いておったではないか、もう怖気付いたのか?』



「そ、それは……」


 だって、相手がまさかプレイヤーだとは思っていなかったんですもの。彼が相手だと知っていましたらもうちょっと別のやり方を取っていましたわ。


 それに、まさか私の雷魔法で水が全て分解されるのも予想外すぎますわ。そりゃ電気分解のことを失念していた私も悪いんでしょうけど、まさかその場の水全部が分解するとは思いませんでしたわ。


 はぁ、少しでも威力が強くなるようにサンダーボルテクスチェインをしたのが間違いでしたわね。恐らくですけど、チェインは対象に当たるとその場にいる他の対象に同じ魔法が次々と付与されるというもの、それで分解する側からどんどんと飛び火していき、あっという間に分解されてしまったんでしょうね。


 その場にはいくつも対象がありますから、電気も水を得た魚のように分解して回ったのでしょう。


『おい、すぐそこまで迫っているぞ。どうするんだ?』




 どうするも何もどうしようもありませんわ。そもそもあのプレイヤーは私よりも強いお姉さまよりも強いんですわよ、勝ち目なんてあるはずが……


「海神様、一度スクリーンを消すことはできますでしょうか? 侵入者に見せたくありませんの」


『ほう、何か考えがあるのだな? よかろう。ただ隠すだけだぞ』


 そう言って、その場にあったスクリーンが忽然と姿を消した。取引をする場合はなるべく相手に情報を与えないことが望ましいですからね。どこまで行けるか分かりませんが、とにかく諦める前にできるだけやってみますわ!


「ん、誰だ?」


「あっ、やっと助けが来てくださいましたわ! 私、ここでずっと遭難していましたの!」


 私はここで、攻略が頓挫してしまったプレイヤーを演じますの。そうすれば彼が私を助けてくれるかもしれませんわ。それに、それとなく救助、の方に意識を向かせることができれば海底神殿からこのプレイヤーを追い出すこともできるかもしれませんわ!


 この人は私がスクリーンで様子を見ていたことは知りません、ですから私が本当に困っているプレイヤーに見えることでしょう。


「あのー、どうか私を助けていただけないでしょうか?」


「え、やだけど」


「え?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る